シルクが彩る暮らし。
太古の昔から現代まで、
最高の天然繊維として
人々を魅了してきたシルク。

お宮参りの産着、
成人式の振り袖、婚礼衣装ー。
人生の節目とシルクは
切っても切り離せない関係にある。

だからこそ「シルクは特別な日のもの」。
そんな考えにとらわれていないだろうか。

むしろ日常の中でこそ、
シルクの力は発揮される。
日々の生活をほんの少し
豊かにしてくれるもの。

そんな「シルクが彩る暮らし」を
過ごしてみてはいかがー。

心華やぐ色彩の力

シルクは美しい光沢や心地よさだけでなく、 多くの機能や可能性を持つ素材。
ただ、「高価で手が届かない」「お手入れが大変」 といったイメージから日常使いには敬遠され、 需要に結びつかない現状がある。
高い技術と質を誇る本県の蚕糸絹業を維持するため、 需要拡大に結びつくアイデアはないかと考えた時、 浮上したのは近年ブームとなっている 「コラボレーション」だった。
髪を失った女性のためのヘッドスカーフを企画販売する 「Armonia(アルモニア)」代表の 角田真住さん(42)=伊勢崎市=と、 染色アーティスト大竹夏紀さん(37)=富岡市。
共にシルクを使った活動をしている 2人の「化学反応」を期待し、 コラボ商品開発を企画。
合わせて、それぞれのシルクへの思いについて聞いた。
大竹さんとのコラボで完成したヘッドスカーフを身に着ける角田さん

コラボ&対談 Armonia代表・角田真住さん×染色アーティスト・大竹夏紀さん

つのだ・ますみ
つのだ・ますみ 1977年、伊勢崎市生まれ。2013年、第2子を出産後に多発性円形脱毛症を発症する。15年、「髪を失った女性のための県産シルクを使ったヘッドスカーフ」が群馬イノベーションアワード・ビジネスプラン部門一般の部で入賞。翌年、合同会社「Armonia」(桐生市)を起業した。現在、当事者団体「ASPJ」の共同代表を務め、交流会などのイベントを通じて内面からのケアに取り組む。
おおたけ・なつき
おおたけ・なつき 1982年、富岡市生まれ。多摩美術大卒。伝統技法であるろうけつ染めで、絹布に染料で絵画を制作。独自のアイドル像である少女を描き、偶像としての少女の姿に理想の世界観を反映させている。近年は少女の姿はアイドルから天女、女神へ変わりつつある。展覧会を中心に国内外で作品を発表している。高崎市美術館の企画展「FLOWER展」(2020年7月4日~8月30日)に、「女神の花」をテーマとした作品を出品予定。

―コラボを受けた理由は。

大竹 染色で絵画制作をしているが、元々は衣服の柄を染める技法。衣服を作る能力がないので、絵を描いているとも言える。今回、女性が身に着けるものが作れ、願がかなった。

角田 大竹さんの作品が好きで、ずっとコラボしてみたかった。ろうけつ染めの透明感や色使いから、生命の輝きが感じられる。髪を失って心も体も疲弊している女性を元気にしたい、というヘッドスカーフのコンセプトにぴったり合う。

―制作について。

大竹 後ろがフリルのようになっていて、他にない華やかさがある。それに合うテキスタイルを作った。絵柄の大きさの調整が難しかった。

角田 装着時に、花や蝶が舞っている柄が映える位置を考えて裁断した。ジュエリーを選んでいるような感覚だった。手に持っただけで、女性らしさを取り戻してもらえそう。

―二人ともシルクを使って活動している。素材としての魅力は。

大竹 富岡市出身で、祖父母は養蚕農家、通学路は桑畑の中、という環境もあり、シルクは身近な素材。特に上品な光沢が好き。絵は綿にも描けるが、シルクの方がきれいな色の染料がそろっているし、発色も良い。理想のアイドルをテーマに描いており、派手で彩度の高い色で表現したいので、シルクしか使いません。

角田 私も実家が養蚕をしていて、祖母の機織りの音や蚕が桑をはむ音を聞いて育った。ヘッドスカーフは肌にあたる内側に群馬のシルクを使っているけれど、実はそれありきで始めていたわけではない。髪を失った人の頭皮は敏感になっており、薬治療で負荷がかかるとウィッグを装着するのも辛い時がある。世界一優しい素材を探して、出会ったのがシルクだった。

―製品に求められていることは。

角田 女性はファッション性だけでなく、身に着けた時の快適さやお手入れの簡単さなども求めている。病気の人だけでなく、ファッションアイテムとしても需要がある。整髪できない入院中や、洗髪できない災害時のためなど、こちらが想定していなかった目的で購入される方もいる。

大竹 どんな時でもおしゃれできるお喜びが詰まっている感じですね。

―シルクの需要拡大について。

大竹 扱いづらいけれど、風合いと肌触りだけは絶品。私自身がアレルギー持ちなので、肌に優しいところもいい。ただ、若い世代はシルクの存在すら知らないかもしれない。最新技術でシワになりにくいなど扱いやすいシルクができたら、可能性が広がるのでは。

角田 ニューヨークで市場調査をした時、日本よりも反応が良かった。海外はオーガニックブームなので、環境や人体に良いものが選ばれる。アトピーや肌の弱い人などマイノリティー向けの展開もいいのでは。市場規模が小さいので商業ベースではなかなか目が向けられないけれど、今は誰でも企業やネット販売ができる時代ですから。

―出来上がったコラボ作品の印象は。

大竹 私の絵の主役はアイドル=偶像としての女性。花やジュエリーは女性を美しく彩るものとして、顔の周りなどに描いている。角田さんが着用した姿を見て、絵に描いた女性が抜け出てきたようでうれしかった。

角田 柄の配色や大きさが絶妙で、さすがだと思った。色の力がダイレクトに伝わって、目や肌まで輝くよう。女性をきれいに見せてくれるし、気持ちも華やぎます!

―今後挑戦したいことは。

大竹 今回は角田さんの力を借りたけれど、やはり着物など身に着けるものを作る技術を身に付けたい。コラボを通じてその気持ちが強くなった。

角田 ずっとアーティストとのコラボを模索していた。アート展示をしている病院が多いように、肌や柄が気持ちに与える影響は本当に大きい。髪を失った女性の当事者団体の共同代表として内面からのケアにも取り組んでいるので、アートの力を使った訴求をしていきたい。

一時中止していたヘッドスカーフ「LINOLEA(リノレア)」の販売を受注生産と言う形で2020年6月中に再スタートします。大竹さんのご厚意で、今回のコラボスカーフも取り扱うことになりました。より多くの女性を元気にできるよう、頑張っていきます。

内装から生活用品まで多彩に

独特の質感と風合い

シルクの原料となる繭は本来、蚕がさまざまな自然現象や外敵から身を守るために作るもの。人にも優しいものとして、その機能性が改めて注目されている。家の内装から生活用品まで、活躍の場は広がっている。

×   ×

2018年3月に落成した富岡市役所新庁舎。正面入り口から中に入るとすぐ、独特のデザインの壁が目に飛び込んでくる。庁舎を設計した建築家の隈研吾さんが、富岡らしさを出すために追い求めた「絹の壁紙」だ。

壁紙はJapanインテリア・シルク(伊勢崎市)が開発した。本県の養蚕再生を目指した武井千秋社長(62)が、建築分野での活用を模索。碓氷製糸(安中市)から取り寄せた13種類の絹糸の中から、蚕が繭を作る時に最初に吐き出す糸「きびそ」に着目した。

きびそはふぞろいの太さとごわごわした質感で織物には向かない。しかし独特の立体感や風合いは癒やしの印象を与える。抗菌性や調湿性に優れ、紫外線吸収などの特性を持つ。インテリアに最適だと気付いた。

武井社長は「住まいは『第3の皮膚』ともいわれ、健康的に暮らせる住環境への関心は高まっている。シルクの用途がウエア(衣服)からインテリアに広がれば、養蚕を守り、ウエアを守ることにもなる」と力を込める。

蚕が繭を作る時に最初に吐き出す糸「きびそ」を使った壁紙。 蚕が繭を作る時に最初に吐き出す糸「きびそ」を使った壁紙。独特の風合いに加え、調湿性・抗菌性などに優れる=富岡市役所

確かな品質を発信

富岡シルクブランド協議会は、富岡産シルクを使った製品を富岡製糸場内のギャラリーで展示・販売している。扱うのはファッション小物から美容関連品まで約300種類。日々の生活に溶け込むものばかりだ。

08年に設立され、養蚕農家から製糸業者、絹加工業者、販売業者まで現在は60人の会員がいる。絹に関わる“川上から川下まで”の関係者が結集し、確かな品質の製品を発信している。

持ち歩くと気分が上がりそうな名刺入れやペンケース、羽織るだけでおしゃれなストール、洗い上がりがしっとりするせっけん、血行が良くなるマッサージブラシ、とかすだけで傷んだ髪を補修して艶を与えるヘアブラシカバーもある。

同協議会主任の笹口晴美さん(57)は、絹の文化がいつまでも続くことを願っている。「シルクには不思議な効果がある。その素晴らしさと、現代も産業として残っていることを伝えたい」

富岡産シルクを使った数々の製品。 富岡産シルクを使った数々の製品。シルクの持つファッション性と機能性は日々の生活に潤いを与える=富岡製糸場内の富岡シルクギャラリー

4資産へようこそ

富岡製糸場

「西置繭所」を特別公開

富岡製糸場(富岡市富岡)にある三つの国宝のうち「西置繭所」の保存整備工事が終了し、特別公開が始まった(6月30日まで)。市は10月のグランドオープンを予定しており、式典や記念イベントを計画している。

西置繭所は1872年に建てられ、原料繭の貯蔵庫として使われた。長さ約104メートル、幅約12メートルの2階建て。2015年から保存整備工事を行っていた。耐震補強を施したほか、ギャラリーや多目的ホールなどを設けた。

1階部分のギャラリーとホールでは、もともとの構造を補う鉄骨と、それを骨組みとしたガラスの壁と天井、その向こうに見える従来の壁や建具などが、独特の雰囲気をつくり出している。生糸生産に使われた道具や日用品などを展示、5言語対応の音声ガイドも用意した。

製糸場の正門前には、市が整備した「旧韮塚製糸場」が完成した。韮塚製糸場は富岡製糸場の建設に尽力した韮塚直次郎が1876年に創業。富岡製糸場を模範として明治初期に建てられた民間器械製糸場のうち、主要建物が残る国内唯一の事例とされる。

また、市役所近くには世界遺産「富岡製糸場と絹産業遺産群」の魅力を伝える県立世界遺産センターがオープンした。

まちなかの施設整備が一段落したことにより、見学者の増加に期待がかかる。新型コロナウイルスの感染拡大が響き、製糸場の2019年度の見学者は前年度比85・3%の44万2840人にとどまった。市担当者は「入場料は製糸場の保存整備費用に充てている。今後の保存整備のためにも50万人程度は維持したい」と話す。

保存整備工事が終わった国宝・西置繭所。操業時の雰囲気を伝える資料などが展示されている
メモ
▽見学時間 9時~17時(最終入場16時半)▽休み 12月29日~31日▽見学料 大人1000円、高校・大学生(要学生証)250円、小・中学生150円。解説員によるガイドツアー参加費は200円(中学生以下100円)、音声ガイド機200円▽問い合わせ 場内総合案内所売店窓口(0274・67・0075)
田島弥平旧宅

元の部材を生かし修復

田島弥平旧宅(伊勢崎市境島村)では、主屋の南東に位置する「別荘」と「冷蔵庫跡」の修復工事が本年度内に完了する計画。2021年度から外観公開を予定しており、旧宅をより深く理解する新たな見どころが加わる。

別荘は木造2階建て瓦ぶきで、一つやぐらがある。元の場所である主屋東側に新蚕室を建てるため、明治初期に移築された。1863(文久3)年建築の主屋より前に建てられ、敷地内に現存する最古の建物と考えられている。1階は晩年の弥平の隠居所だったと伝えられ、その後、家畜小屋や物置として使われていた。

2018年度から実施している今回の工事は、傷んだ建物の修復と耐震補強が目的。元の部材を可能な限り生かすため伝統工法を取り入れている。現在は西側の下屋と便所屋根の瓦ぶきに取り組む。

別荘はかつて、弥平が清涼育の実験を重ねた「香月楼」とつながっていたとされる。工事に当たり別荘東側を覆っていた板を外したところ、それを裏付けるような痕跡が見つかった。市教委文化財保護課は「現存していない香月楼に関するもので貴重」と指摘する。

冷蔵庫跡は香月楼跡にあるコンクリート製の地下遺構。縦4メートル、横4・8メートル、深さ2・4メートルで、氷で冷やす蚕種貯蔵施設だった。本年度はコンクリート面に劣化を防ぐ硬化処理を施す。また、別荘と冷蔵庫跡の間に見学用の通路を整備する予定だ。

田島弥平旧宅案内所では昨年、島村と深い関わりがある渋沢栄一と宮中養蚕の企画展を開催した。同課は「今後も来訪者の理解を深めるような展示をしたい」としている。

修復工事が行われている別荘。古い屋根瓦もできる限り生かしている
メモ
▽見学時間 9時~16時▽見学料 無料▽休み 12月29日~1月3日▽問い合わせ 田島弥平旧宅案内所(0270・61・5924)
※主屋1階「上段の間」は毎月第3日曜日に公開。週末には旧宅近くの「おもてなし広場」で土産品販売や桑茶のサービスがある。
高山社跡

VR、空撮 デジタル活用

高山社跡(藤岡市高山)ではデジタルを活用した展示解説の充実に加え、周辺の景観向上が進んでいる。

本年度から導入した「高山社跡デジタルコンテンツ」は、専用のQRコードをスマートフォンやタブレット端末で読み込むと、高精細CGによるVR(仮想現実)動画や空撮映像を楽しめる。母屋兼蚕室、長屋門のほか、現存していない建物も歴史資料などを基にCGで再現した。ドローンによる空撮映像、母屋兼蚕室の写真資料、360度の視点で室内などを見回せるカメラ映像もある。

母屋に入ってすぐ正面には、高山社の歩みや高山長五郎らゆかりの人物を紹介する電子案内板を設置。タッチパネル式になっており、来場者が自由に知りたい情報を見られる。代わりに敷地内に複数ある案内看板を撤去する予定で、市教委文化財保護課は「(明治から大正期の)分教場時代の外観に近づけ、当時の雰囲気を感じてもらいたい」と話す。

3年に及ぶ修復工事を経て、昨年度から一般公開している長屋門周辺の景観も向上した。大正期の絵はがきの写真を基に、門の西側に竹垣を復元。門の東側では石垣の修復が大詰めを迎えている。県道南側の三名川には人道橋が新たに架け替えられた。

駐車場などの周辺整備、敷地内の付属施設整備に続いて、2021年度からはいよいよ母屋の修復工事が始まる。保存整備費に充てるため、市は本年度から観覧を有料化した。「甲種高山社蚕業学校」の入学許可書をモチーフにした遊び心ある入場券を用意するなど、ハードとソフト両面の魅力向上を図っている。

母屋兼蚕室内に設置された電子案内板。高山社の歩みなどをタッチパネル式で調べられる
メモ
▽見学時間 9時~17時(最終入場16時半)▽見学料 500円(市民、高校生以下、障害者とその介助者は無料)▽休み 12月28日~1月4日▽問い合わせ 高山社情報館(0274・23・7703)または藤岡市教委文化財保護課(0274・23・5997)
荒船風穴

御影石で「遺構線」表す

荒船風穴(下仁田町南野牧)の見学者に、風穴の仕組みや価値をより分かりやすく伝えようと、町は見学環境の改善を続けている。

風穴を見下ろす場所にあった管理棟「番舎」の遺構整備もその一つ。大正初期に建てられた木造2階建ての建物の間取りを表す「遺構線」を御影石で表し、かつての姿をイメージしやすくする。また、木製チップを使って園路を舗装するほか、昨年導入して好評だった見学者用の無料シャトルバスを本年度も運行している。

天然の冷風を利用して蚕の卵(蚕種)を貯蔵していた荒船風穴。見学者にその冷たい風を体感してもらうため、町は2018年度に「風穴冷風体験館」を開設した。風穴の周辺には冷風が吹き出る場所が点在しており、同館はその一つを建物に取り入れた。休憩所を兼ねた木造平屋建ての施設で、真夏でも10度前後を保つ冷風を感じることができる。

風穴の価値を知ってもらうには、ハードの整備だけでなくソフト事業も欠かせない。

昨年度は風穴のほか、町歴史館、神津牧場などを巡ると缶バッジがもらえる高校生以下の子ども対象としたイベントを実施。町内外から多数が参加した。さらに田島弥平旧宅と風穴のつながりを考えるセミナーが伊勢崎市で開かれたり、藤岡歴史館の企画展で風穴の資料を展示するなど、他の構成資産との連携を探る試みが活発だった。

町担当者は「今年は新型コロナウイルス感染の影響で昨年のようなソフト事業は難しい。完成した県立世界遺産センターを中心に連携を強めたい」としている。

現在も冷風が吹き出す荒船風穴。風穴の価値をより分かりやすく伝える見学環境の改善とソフト事業の充実が続く
メモ
▽見学時間 9時半~16時(受け付けは15時半)▽見学料 500円(高校生以下と下仁田町民は無料)荒船風穴と下仁田町歴史館(200円)を両方見学するとどちらかの見学料200円割引▽休み 無休(12月1日~3月31日は冬季閉鎖)▽問い合わせ 下仁田町歴史館(0274・82・5345)

世界遺産登録6周年
次世代継承へ知恵

4資産の連携を物語るエピソードが表示される「まゆ玉テーブル」=県立世界遺産センター

「富岡製糸場と絹産業遺産群」は25日、世界遺産登録6周年を迎える。構成4資産では、次世代への継承に欠かせない保存整備工事や見学環境の改善が進む。今月1日には富岡市に県立世界遺産センターがオープン。県内はもとより国内外の関係者との連携や研究を深化させ、世界遺産の価値をより高める―。そんな時期を迎えている。

登録以来、4資産の来場者は減少し続けている。2019年度の合計来場者数は48万6804人で、18年度に比べ8万1180人(14・3%)減。新型コロナウイルス感染症の拡大防止で休業したことなども響いた。田島弥平旧宅以外は見学料を保存整備費に充てるため、来場者減は地域経済だけでなく、保存整備計画にも響きかねない。それだけに各自治体は来場者増に知恵を絞る。

富岡製糸場の西置繭所は10月にグランドオープン予定。富岡市が整備した「旧韮塚製糸場」と合わせ、見どころが増えた。田島弥平旧宅では最古の建物と考えられる「別荘」の保存整備工事が進んでいる。高山社跡はリピーター増を目指してユニークな入場券を用意、荒船風穴は管理棟跡や園路整備に力を入れる。

こうした動きの中心となるのが、富岡市役所前に完成した県立世界遺産センターだ。4資産がなぜ世界遺産に登録されたのか、その関係性を伝えることで来場者に理解を深めてもらい、さらには知名度向上につなげる。産業遺産を分かりやすく伝えるガイダンスVR(仮想現実)映像を取り入れたほか、4資産それぞれの特徴や見どころ、最新情報を発信。県内に点在する絹関連文化財も紹介している。

世界遺産の継承には資産の価値を高める調査研究も欠かせない。県と富岡市などでつくる「シルクカントリー群馬プロジェクト実行委員会」は、県内外から「富岡製糸場と絹産業遺産群」などをテーマとする研究を助成する事業「絹ラボ」を実施。世界遺産センターも将来的には専門の研究員を配置する方針だ。

富岡シルクブランド協議会:
「オーガンジー三つ編みストール(蝶)」
富岡市出身の染色アーティスト・大竹夏紀さんの作品を富岡シルクで表現したストール。キラキラにきらめく少女をイメージして描かれたろうけつ染めの原画をもとに、50種類以上の型を製作、職人による手捺染で染色した。