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「回想法」に養蚕 言葉、笑顔増え手応え 認知症対策で 神流の特養ホーム

楽しみながら繭の取り入れを行う利用者
楽しみながら繭の取り入れを行う利用者

養蚕で昔を思い出して認知症を改善しようと、神流町万場の特別養護老人ホーム「シェステやまの花」(落合玲子施設長)が養蚕を使った「回想法」という認知症ケアに取り組んでいる。同施設は「お年寄りの体に染み付いた記憶がよみがえっているようで、言葉も笑顔も増えている」と手応えを感じている。

県内の特養ホームでは、認知症改善のため、愛玩動物を使ったアニマルセラピーをはじめ、音楽療法やアートセラピーなどに取り組んでいる施設が多い。

昔の生活道具や写真を見ながら思い出を語る回想法は、認知症の改善に一定の効果があるとされる。県内の介護施設では、農業が盛んだった本県の特色から農作業などの道具が回想法で使われることが多かったが、生き物の蚕を使った取り組みは珍しい。

同施設では、利用者の多くがかつて養蚕をしていたことから、三年前から年に一回、県蚕糸技術センターから蚕を譲り受け、入所者とデイサービス利用者らがいっしょになって育てている。

今年は五月二十二日に二、三センチの蚕約三百匹が届いた。今回初めて白い繭のほか、黄、緑色の繭になる品種の蚕も同センターが提供。入所者らが成長を楽しみにしながら桑を与え、回転蔟(まぶし)十棚や藁(わら)蔟に三種類の見事な繭ができあがった。

十一日には、繭を蔟から取り出し、毛羽(けば)を取る繭かきを実施。約二十人がかつて農家の生活を支えた養蚕を思い出しながら作業を楽しんだ。繭は民芸品を作っている地元グループに出荷するという。

施設利用者の斎藤はつゑさん(81)は「昔、養蚕をしていたから懐かしい。硬くていい繭ができた」と笑顔で話していた。

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