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《記憶をつなぐ 時代をつむぐ 哲学塾鼎談から(下)》 地域の豊かさめぐりフォーラム

出席者
  • 内山 節(立教大学大学院教授、哲学)
  • 大熊 孝(新潟大学教授、河川工学)
  • 鬼頭秀一(東京大学教授、環境倫理)
鼎談に耳を傾ける参加者
鼎談に耳を傾ける参加者

県内各地で、それぞれの地域の歴史や文化、自然を見直す動きが活発になり、それを地域づくりにつなげようという試みも目立っている。鼎談(ていだん)では、これらの活動の基になっている「地域の力」についても議論が交わされた。

大熊さんは、過去には治水をめぐって地域間対立が起きていたことを説明。「上流と下流、右岸と左岸などで利害関係が異なるので、地域間対立が起きることはよくある。だが、高度経済成長期以前は、地域の人たちが話し合って、うまい方法を考えてきた。今はそれを行政に任せてしまっている」と話し、住民同士のかかわりの薄さが、地域の力を弱めているとの考え方を示した。

地域を取り巻く環境が、地域の力を失わせているとの指摘も。内山さんは「地域金融機関は、地域との『結び合い』の中で仕事をしてきたが、グローバルスタンダードが持ち込まれ、かつてのような仕事がしにくくなっている」と述べ、地域の中で、仕事と支え合いのバランスの取り方が、難しい社会となっているとした。

これからの地域づくりに、「地域の力」を取り戻すことは不可欠。そのためには、どんなことが求められているのだろうか。

大熊さんは「楽をしないで、じっくり話し合う必要がある。もう一度、みんながそういう忍耐力を付けていかなくては。何でも行政に預けるのではなく、もう少し頑張ることが大事だろう」と発言。

鬼頭さんは「例えば、国が堤防を整備してくれるようになったために、住民には洪水にどう対処すればいいのかという知恵がなくなった。そんな状態で『さあどうしますか』と言われても、どうしていいか分からない。地域が持っていた知恵や歴史が、見えてこなければいけない」と述べ、それらを共有していく作業やシステムを作ることが必要となる、と指摘した。

さらに「今は忘れてしまったり、見えなくなっているが、先人が築いたものを掘り起こし、学んでいかなければ。方法は世界遺産登録運動でもいいし、ほかの形でもいい。それが地域の力に結び付いていく」と語り、本県の絹産業遺産群の世界遺産登録運動も、地域の力を取り戻す有効な方法となり得るとした。

最後に内山さんは「群馬のシルクの問題を、さまざまな地域で議論していくことが、いい動きになっていくと思う。誰かに企画を考えてもらうのではなく、自分たちの地域で飽きるまで議論する、そういうことから始めてみたい」と発言。地域の力を取り戻すために、足元の問題を深め、議論を重ねていく大切さを強調した。(小林聡)

(6月24日、高崎哲学堂)

◎地域創造フォーラム 28日から前橋と片品

県内で行われている地域活動の価値を探る「ぐんま地域創造フォーラム」(県など主催)が二十八日に前橋市・群馬会館、二十九、三十日に片品村・尾瀬岩鞍ゆり園内で開かれる。

本県の絹の文化を手掛かりに内山さん、大熊さん、鬼頭さんを中心に、県内各地で地域活動に取り組む人たちが加わる“車座”のフォーラムとする。申し込みは二十日までに、県地域創造課(電話027・226・2371)へ。

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