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「富岡製糸場と絹産業遺産群」Web

大正期の営業案内操業時帳簿など発見 下仁田の「荒船風穴」住民の合意形成狙う 伊勢崎・境島村の大型養蚕農家

発見された荒船風穴関連資料の一部
発見された荒船風穴関連資料の一部

日本一の蚕種貯蔵能力を誇り、本県の世界遺産構想「富岡製糸場と絹産業遺産群」に加わっている下仁田町南野牧の蚕種貯蔵施設跡「荒船風穴」について、大正時代に作製された「営業案内」や操業時の帳簿など約四百点の資料が二日までに、同町西野牧に住む創業者の子孫宅から見つかった。営業案内には同町教委が「初めて確認した」という風穴内部の写真や、貯蔵した蚕種の種類、料金などが掲載されていた。世界遺産登録に向け、風穴の歴史研究を大きく進展させる価値ある資料となりそうだ。

資料が見つかったのは、かつて風穴の事務処理や蚕種製造を行う「春秋館」として使われ、現在は創業者、庭屋静太郎氏の子孫にあたる知恵子さん(77)宅の蔵。営業案内のほか「入穴帳」「冷蔵種受付帳」などが、ひとまとめに保管されていた。
風穴内部の写真は、四人の作業員が貯蔵箱を開けるなど蚕種の整理作業をしており、貯蔵箱が壁面に整然と積み上げられていたことが分かる。

また営業案内によると、春秋館が取り扱った蚕種は、「又昔」「下木村」「国富」など六種類。又昔の説明として「繭質統一の主唱者原富岡製糸所(旧官営富岡製糸場)の奨励に係る優等種」「私立甲種高山社蚕業学校の選出に係る『高山社二号又昔』」などと記されており、荒船風穴が旧富岡製糸場や高山社などほかの絹産業遺産群と結び付いて営業していたことを裏付けている。

今回見つかった資料について、下仁田町教委は、町文化財調査員や県世界遺産推進室と連携して調査する方針。

営業案内など発見資料の一部は、同町ふるさとセンターの常設展示に加えて、一般公開している。入館料は百円。

荒船風穴は一九〇七(明治四十)年ごろに造られた日本最大の蚕種貯蔵施設。天然の冷気が吹き出す穴を石垣で囲み、その上に蔵造りの建物を建てた。蚕種を低温で保存することで、夏から秋にかけての養蚕を可能にした。石垣の囲み三基が現存している。

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