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「重伝建」目指し調査 構造や歴史的視点 本年度中に市教委内部写真を初確認 創業者の子孫宅から 町教委

伊勢崎市境島村に残る大型養蚕農家
伊勢崎市境島村に残る大型養蚕農家

伊勢崎市教委は、国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)=豆字典=の選定を視野に入れて、伊勢崎市境島村に残る大型養蚕農家と同地区で発達した近代蚕種業の調査に乗りだす。農家を実測して構造や配置などを詳細に図面化、建物の分布調査も行う。蚕種は歴史、民俗学的な視点から調査する。市教委はすでに終了した蚕種をふ化させる催青所(さいせいじょ)と島村教会の調査と併せて、重伝建選定に向けた基礎資料を整えるほか、地元住民の理解を求めていく。

調査は伊勢崎市歴史的建造物調査委員会に委託する。調査には歴史的建築を専門とする大野敏横浜国立大准教授、歴史地理学が専門の関戸明子群馬大准教授、ぐんま島村蚕種の会会員で県蚕糸課長や農政部技監を務めた関口政雄さんが加わる。第一回調査委員会を七日に開き、来年三月までに調査を終える予定。

重伝建選定には地元の合意形成が必要になるため、市教委は十日、境島村公民館で六合村赤岩地区の重伝建選定に携わった県教委文化課職員を迎えた講演会も開く。地区住民に伝統的建造物群についての共通認識を持ってもらうのが狙いだ。

同地区は、田島弥平ができるだけ自然に任せる養蚕の飼育法「清涼育」を説いた技術書「養蚕新論」を著した地で、日本三大蚕種産地の一つとして栄えた。同書の指導に基づき、蚕室の通気を良くするため屋根の頂に幾つかの小窓を設けた農家約七十棟が今でも残る。

調査は代表的な養蚕農家を選び、詳細な平面図や立面図、断面図、構造図、付属する建物を含めた配置図を作る。建築史的な考察も加える。

養蚕農家の分布調査は利根川を挟んで本県側と埼玉県側に広がる島村全域で行う。垣根や石垣、防風林の配置も調べる。度重なる利根川の洪水に見舞われながら人々がどのような経過で同地区に住むようになったのか歴史地理学的に検証する。

近代蚕種業に関する調査は、江戸末期から明治にかけて田島弥平らが残した文書をはじめ、蚕種業者が礎をつくり、今年創立百二十年を迎えた島村教会の記録、同地区の農家に残っている文書などを中心に調べる。

養蚕農家の保存・活用を目指して活動し、昨年、農家の家屋調査を実施したぐんま島村蚕種の会は世界遺産登録にもつながるとして、今回の調査に期待する。市教委は「将来的には島村の重伝建選定を目指す。調査は住民の理解を得ながら進めたい」と話している。

豆字典 重要伝統的建造物群保存地区
歴史ある建物と町並みについて、国が実際の生活の舞台のまま保存する取り組みを進める地区として選定する。本県では昨年七月、養蚕で栄えた農村風景が残る六合村赤岩地区が選定されている。
富岡製糸場(富岡市) 田島弥平旧宅(伊勢崎市) 高山社跡(藤岡市) 荒船風穴(下仁田町)