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《シルクカントリーin赤岩》養蚕実現で活気 住民の熱意が開花 20年ぶり “本物”に観光客ら感激

来場者が昔を懐かしんだ養蚕体験=稚蚕飼育所
来場者が昔を懐かしんだ養蚕体験=稚蚕飼育所

心温まる農山村に人々の笑顔があふれた―。絹の文化や歴史に触れるイベント「シルクカントリーin赤岩」が開かれた六合村赤岩地区に二十五日、さまざまな世代の観光客が訪れ、養蚕体験や繭クラフト作り、集落の散策などを通して、地元住民と触れ合った。のどかな農山村が活気に沸いた。

赤岩地区住民が二十年ぶりに共同で蚕を飼育している稚蚕飼育所では、養蚕体験が行われた。生きた蚕を手にした中高年の観光客は養蚕に明け暮れた昔を懐かしみ、初めて見た子供たちは「顔が新幹線みたい」と驚きの声を上げた。本県の養蚕農家が年々減る中で、「来訪者に本物の養蚕を見せたい」という住民の熱意が花開いた。

赤岩地区は建物や町並みが養蚕業の特徴を残す集落として今年六月、世界遺産暫定リスト入りしたが、実際に養蚕をする農家はいなかった。

このため住民らは今年、共同で養蚕をすることを決め、長年放置していた桑畑を手入れしたり、飼育場所を確保するため稚蚕飼育所の床を張り替えるなど、準備を進めてきた。七月中旬にようやく蚕の飼育が始まると、約一カ月で百人の観光客が訪れた。

この日、飼育所を訪れたみなかみ町羽場の林喜美雄さん(59)は「子供の時以来、五十年ぶりに蚕を見た。最近は養蚕農家が減っているから、懐かしく思う人は多いはず」と感慨深く語った。前橋市荒牧町の生方千晴さん(8)は「ふわふわしてかわいい。家で飼いたい」と話し、蚕を手のひらにのせて見詰めていた。

本県蚕糸業を取り巻く環境は厳しい。格安の輸入生糸に押されて、国産生糸の価格は低迷を続けている。養蚕農家軒数は一九五八年に戦後最多の八万四千四百七十軒を記録後、減少を続け、昨年は五百五十七軒になった。こうした状況下で、赤岩住民は養蚕を観光要素の一つとして売り出そうとしている。

「わずかな飼育量であっても、本県養蚕業にとって明るい話題。住民の前向きな姿勢があったから、実現できた」。技術指導をした県蚕糸園芸課の森久次長は喜ぶ。

蚕の飼育担当として、毎日桑を与えている赤岩住民の安原繁安さん(75)は「三十年前の養蚕経験が、こんなところで役立つとは思わなかった。訪れる人々がみんな喜んでくれるのでやりがいがある」と、柔和な顔をほころばせた。

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