上毛新聞社「21世紀のシルクカントリー群馬」キャンペーン

上毛新聞社Presents
「富岡製糸場と絹産業遺産群」Web

居住者8割が理解 「重伝建」核にまちづくり 市 基本計画に盛り込む 桐生市本町1、2丁目

江戸から昭和の貴重な建物が残る本町1、2丁目
江戸から昭和の貴重な建物が残る本町1、2丁目

江戸から昭和の織物工場や民家が残る桐生市本町一、二丁目で、重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)=豆字典=を核にしたまちづくりの是非を問う住民意識調査の中間報告が五日、調査を進めた「本一・本二まちづくりの会」(森寿作会長)の情報誌「しんまち通信<瓦版>」に掲載され、居住者の約八割が同意していることが分かった。地区の意思統一を求めてきた桐生市は、年度末までに策定する「桐生新町まちづくり基本計画」に住民の意向を盛り込む方針で、重伝建を活用したまちづくりが大きく前進しそうだ。

同会は六月中旬から、借家を含む居住者、建物所有者、土地所有者に分けて調査を進めてきた。中間報告では、約四百人を対象にした居住者の意向を公表した。

同エリアのまちづくりは、県と同市の「まちうち再生総合支援事業」を活用して進めている。支援事業は重伝建を前提にしないまちづくりを模索してきたが、今回の調査結果により、まちづくりの核として重伝建が前面に出ることになった。

事業の窓口となっている市都市計画部は十月中に、居住者、建物所有者、土地所有者の他に不在地主の意向などを加えてデータを精査し、最終のまとめを行う。

亀山豊文市長は「桐生の将来を考える時、まちの原点である本町一、二丁目は重要なエリア。都市計画部の最終報告を待つが、住民の意向は大切にしてまちづくりを進めたい」としている。

同会の森会長は「八割の方が重伝建に理解を示してくれた。先に重伝建となった六合村の赤岩地区では、住民が地域の将来に希望を持っている」と、重伝建を核にしたまちづくりの意義を強調する。

同会は昨春、まちの将来像を「桐生新町まちづくり構想」にまとめ、重伝建を選択肢の一つに挙げた。住民説明会を通して重伝建への関心が高いことを確認。これを受けて、今年二月に重伝建に絞った説明会を行い、住民の意識調査を実施することを決めた。

◎「非常に大切な遺産」 県推進室

桐生市の本町一、二丁目では、国の重伝建調査が一九九三年度に行われ、最近ではエリア内の多くの建物が国の登録有形文化財に指定されている。この地区は、世界遺産登録運動を進める県が昨年秋、文化庁への提案書に盛り込む候補地としてリストアップ。この際、同市は「住民主体のまちづくりを、市の判断が拘束することになる」として推薦を見送った経緯がある。

県世界遺産推進室は「他県にはない養蚕、製糸、織物のストーリーを完結する意味で、桐生の本町一、二丁目は非常に大切な遺産であることに変わりない」としている。

豆字典 重要伝統的建造物群保存地区
文化財保護法の改正で一九七五年に制度化された。歴史を誇る建物や町並みを対象に、実生活を営みながら保存・活用する国の制度。指定を受けると、対象となる建物の修理などに対して、国の補助が受けられる。本県では二〇〇六年七月に養蚕農家などの建物が残る六合村赤岩地区が選定されている。
富岡製糸場(富岡市) 田島弥平旧宅(伊勢崎市) 高山社跡(藤岡市) 荒船風穴(下仁田町)