休業農家で養蚕挑戦 座繰り糸作家安中の東さん 新規参入のモデルに 榛東
- 掲載日
- 2007/09/17
真下さん(右)のアドバイスを受けながら養蚕に挑戦する東さん
県蚕糸技術センターの養蚕体験講座を修了した安中市郷原の座繰り糸作家、東宣江さん(31)が、休業中の養蚕農家から蚕室と桑畑を借り、実際の養蚕に挑戦している。養蚕は「飼育技術の難しさ」や「蚕室や桑畑の確保」など新規従事者にとってハードルが多いが、東さんは蚕室を借りることでコストを省き、ベテラン農家の助言を受けて励んでいる。蚕糸関係者らは新たな養蚕従事者を生み出すモデルケースにと期待を込めて注目している。
東さんは和歌山県出身。生糸に興味を持ったことから六年ほど前に本県に移り住み、安中市の碓氷製糸農業協同組合などで座繰り製糸の技術を身に付けた。現在は同市内に工房「蚕糸館」を構えて、生糸作りと販売をしている。
同センターが今夏、新たに養蚕や上州座繰りを始める人に技術を教える「絹へのふれあい体験学習講座」を開催することを知り、「生糸の原料になる繭がどう作られているのか知りたい」と受講。二十日間の講座を修了すると「勉強した技術を実践で生かしたい」という気持ちになった。
ところが実際に養蚕を始めるには、蚕室や桑畑の整備など、初期に大規模な投資が必要。このため、同センターの仲介によって、病気で養蚕を休んでいる榛東村新井の真下尊富さん(86)宅の蚕室や養蚕道具、桑畑などを借り、アドバイスを受けながら飼育することになった。
飼育は九日に始まり、蚕三万匹は十月初めまでに繭になる予定。東さんは期間中毎日通い、桑とりや桑くれ、室温の管理など、朝から夕方まで世話をする。収穫した繭は、自身の座繰り糸作りの原料にする。
東さんは「養蚕の技術や文化を学べる非常にいいチャンスをいただいた。実際に自分で育てると、『繭は大事。無駄にしてはいけない』という気持ちが強くなり、糸作りにもいい影響が出そう」と語る。
真下さんは「愛着ある養蚕技術を、若い人が継承してくれるのは本当にありがたく、応援したい」と喜んでいる。