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養蚕文化体験施設に 重伝建の旧稚蚕共同飼育所 六合・赤岩 地区住民の寄付金で改修

屋根の修復作業が進む六合村赤岩地区の旧稚蚕共同飼育所
根の修復作業が進む六合村赤岩地区の旧稚蚕共同飼育所

国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)に選定された六合村赤岩地区にある旧稚蚕共同飼育所を、同地区に住む安原義治さん(79)が約百四十万円を寄付して屋根を修復している。四十五年前に建てられ、当時の養蚕の繁栄を語る施設は、屋根が傷み、雨漏りで床が抜けるほど老朽化が進んでいた。今週末に作業が終わる予定。養蚕の飼育や繭から糸をつむぐ「座繰り」、機織りなど一連の“シルクストーリー”を見学、体験できる施設として十一月から活用される。

同飼育所は、赤岩養蚕組合が一九六二年に設置し、八五年ごろまで使用した。土壁に囲まれた「電床式土室育(どもろいく)」と呼ばれる飼育所で、約百十平方メートルの広さに、十二の飼育室と桑の貯蔵場所、休憩できる管理室がある。

飼育所としての役目を終えた後、集会場などとしても利用したが、改装はされず飼育室などはほぼそのまま残っている。一時は解体案も浮上したが、数年前から重伝建に向けた活動も始まり、保存されてきた。

今年七月には、県の補助金などを利用して、雨漏りによって抜けた床を改修。屋根まで直せなかったため、新たな出資者を探したが見つからず、観光ガイドを務めるなど同地区の振興に積極的な安原さんが寄付を申し出た。


安原 義治さん
安原 義治さん

安原さんは「父が飼育主任として、共同飼育所に長く携わった。その苦労や思い出を残すとともに、赤岩の魅力を伝える拠点になってくれれば」と話している。

赤岩ふれあいの里委員会「おかいこ部会」の安原繁安部会長は「屋根はブルーシートで応急処置していたが、雨漏りが大変だった」と感謝する

今後、同飼育所は養蚕の道具などを展示している「蚕の家」と合わせて、観光客に養蚕に触れてもらう施設として活用していく。

県蚕糸園芸課の森久次長は「県内では、各集落ごとに九百数十戸の稚蚕共同飼育所があったが、壊されたり、改装されて今では非常に数が少なくなっている。かつての養蚕の繁栄を伝える貴重な施設になるだろう」と話している。

重伝建の選定以来、同地区の見学者は急増。世界遺産の話題も加わり、四月以降さらに増えた。九月は十―百五十人の団体、十五組をガイドが案内した。ガイドを受けない観光客も、一日平均十人以上が訪れている。

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