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「富岡製糸場と絹産業遺産群」Web

農家、業者で協議会 地元産ブランド確立へあす設立 加工まで体系化 蚕糸絹業グループ化で富岡市

富岡シルクブランド構想図
富岡シルクブランド構想図

国の新たな蚕糸・絹業提携支援制度=豆字典=を受けて、富岡市は七日、市内の養蚕農家や製糸業者、加工業者を集めた富岡シルクブランド協議会を設立する。養蚕、製糸など蚕糸業と、織物、流通など絹業の提携グループを補助金交付対象とする新制度に沿って、協議会がコーディネーターとなり、繭や特徴ある生糸の生産を委託、加工までの各段階を体系化し、地元ブランドの「売れる絹製品」開発を推進する。旧官営富岡製糸場などを支えた絹産業全般の振興が目的で、行政主導によるグループ構築は全国で初めて。

計画によると、協議会は市内の養蚕農家二十二戸と地元JA、県内外の製糸組合・会社、地元加工業者、繭・生糸を扱う個人作家らで構成。川上の養蚕と川下の加工を結び、適切に収益配分する提携システムを確立して繭代を確保、農家の経営安定を図り、補助金が交付される三年間で自立を目指す。

繭取扱高は、春繭の県オリジナル蚕品種「ぐんま200」と晩秋繭の「錦秋鐘和(きんしゅうしょうわ)」を合わせ、年間五トンを想定。一部は繭で、加工業者や座繰り製糸を行う作家に渡る仕組みにする。他は製糸業者を経由し、独自の製品開発に取り組む農家団体や絹タンパク質活用を目指す食品加工業者の研究会などに生糸を流通させる。

申請中の計画が承認された場合、新設の基金から本年度交付される補助金は繭一キロ当たり三千円で、受け皿となる協議会が使途を決める。直近の取引指導繭価は一キロ千五百円台、県内農家の平均手取りは同千九百円台半ばだが、事務局となる市は、二千三百円を下回らない水準に繭代を設定する方針。

新製品開発のため、製糸・加工段階に対する補助も検討するほか、販路開拓のパンフレットなどを製作する。市も生糸の一部を引き取り、タペストリー、テーブルセンターなどの試作を県内の織物協同組合などに委託する考え。整備活用計画策定中の製糸場で繰糸機の動態保存が実現すれば、地元の繭を製糸に充てる。

市内の養蚕農家は減少の一途で、市は「養蚕農家が消滅すれば富岡製糸場を取り巻いてきたシステムが崩壊し、世界遺産に登録されても真の価値が失われる。養蚕農家に誇りを持って蚕を飼育してもらい、桑園の景観も保護したい」としている。

豆字典 蚕糸・絹業提携支援制度
養蚕農家に繭代を補てんしてきた政策を大きく転換する新たな蚕糸対策事業。国産繭を使った付加価値の高い絹製品づくりを通じ、自立可能なシステムを確立するため、川上・川下のグループ化を求める。
実質的なスタートは本年度で、提携支援センターの大日本蚕糸会(本部・東京)によると、提携システム確立の公募に対する申請は全国から七件。補助金は三年間で段階的に減額される。準備段階も支援対象とするが、確立の取り組みが早いグループほど、補助金単価で優遇される。
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