上質生糸で再生を 絹の郷シンポ 蚕糸業の活性化探る 前橋
- 掲載日
- 2008/05/31
蚕糸業再生に向け活発な意見交換が行われたパネルディスカッション
本県の蚕糸業活性化をテーマにした「絹の郷(くに)シンポジウム&現地見学会」(県、絹の会主催)が三十日、県庁で始まり、県内外の染織作家や呉服業者、着物愛好家を中心に約百人が集まった。絹にまつわるさまざまな立場から上質の繭、生糸づくりに向けた展望が語られ、密度の濃い意見交換が行われた。
日本の蚕糸業が存亡の危機の中で、国が本年度、繭代補てんから蚕糸絹業グループ化への支援制度に方針を大きく転換。今回のイベントは質の高いぐんまの絹から再生の道を探ることを目的に、全国から参加者を募った。
最初の基調講演で登壇した染織作家の柳崇さんは、前橋市大胡地区の養蚕農家が生産した繭からできる「生挽(び)き生糸」や、上州座繰り糸を作品に使用している。柳さんは「繭の品種だけでなく、製糸や精練、撚糸(ねんし)までこだわって初めて特徴ある絹ができる。こういう努力をしていかないと続いていかない」と強調した。
続くパネルディスカッションでは、柳さんのほか絹の会会長で呉服店経営の西尾仁志さん、JA前橋市蚕業技術員の楠由輝夫さん、碓氷製糸農業協同組合参事の小板橋広行さん、県蚕糸園芸課絹主監の狩野寿作さんの五人が蚕糸業を残す意義について語り、上毛新聞社の藤井浩文化生活部長がコーディネーターを務めた。
生糸の仲介なども行っている西尾さんは「かつて世界一を誇った日本の絹がなくなっていいはずはない。良い繭を作り、受注生産として展開していけば可能性が開けてくる」と語った。三十一日の見学会は養蚕現場コース、製品開発コースに分かれ、富岡製糸場や碓氷製糸農協、養蚕農家などを巡る。