平泉“落選”で県内 「価値伝える努力必要」 県や富岡市 市町村連携へ意欲
- 掲載日
- 2008/07/08
7日も見学者が訪れた富岡市の旧官営富岡製糸場
「簡単には通らなくなっている」。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会が決議した岩手県「平泉の文化遺産」の登録延期。富岡製糸場と絹産業遺産群の世界遺産登録を進める県や富岡市などは七日、日本政府推薦の候補では初めての“落選”に敏感に反応した。関係市町村と連携し、登録申請に向けて真剣に取り組む姿勢をあらためて示した。
審議はカナダ・ケベックで開かれ、傍聴した県職員が県世界遺産推進室に伝えた情報によると、平泉の文化遺産の建造物や遺跡に対する委員国の評価は良かったが、「どうして世界遺産にしたいかという点がはっきりしない」などと疑問が上がったという。
同推進室の松浦利隆室長は「遺産の価値をいかに正しく伝えるかの努力が必要と強く感じた。はっきりしたコンセプトが求められている」と受け止める。
六月にパリのユネスコ本部などを訪問した大沢正明知事は、七日の定例会見で「文化や伝統は日本語では相手先に理解されない。最初から英語で書けるレベルの推薦書を仕上げないと、伝わっていかないものがあると指導された。これから原点に戻って関係市町村と連携を取りたい」と述べた。
絹産業遺産群の中心構成資産、旧官営富岡製糸場を抱える富岡市は、推薦遅れなどの影響を懸念する。
岩井賢太郎市長は五月の県・市町村懇談会で、暫定リスト記載当時の資産構成再検討の指摘に沿って、旧官営新町屑くず糸紡績所(高崎市)などを取り込むよう、大沢知事らに要望したばかり。「厳しい結果だが、平泉登録の次を目指すとすれば四年後。県や他市町村と連携を深め、しっかり準備したい」と述べた。
富岡製糸場総合研究センターの今井幹夫所長は、記載当時に指摘を受けた遺産群の世界史的位置付け、隣接県・他地域との比較・取り込みなどは県の考え方とし、「地道に製糸場研究を進める以外にない」と話す。
啓発活動などに取り組む「富岡製糸場を愛する会」の高橋伸二会長は「直接的影響は考えにくいが、協力団体と連携し、登録推進運動を強めたい」と話した。