「数の制限は反対」 前ユネスコ全権大使近藤さん、世界遺産語る 東京
- 掲載日
- 2008/09/07
世界遺産の動向について講演する近藤氏
前ユネスコ日本代表部特命全権大使で、七月の第三十二回世界遺産委員会に日本政府代表団団長として出席した近藤誠一氏(62)が六日、東京都内で講演し、世界遺産条約成立の経緯や概念の推移、今後政府が果たすべき役割などについて持論を展開した。
講演は、文化遺産保護にかかわる国際記念物遺跡会議(イコモス)の国内組織、日本イコモス国内委員会が開催。会員のほか、本県を含む世界遺産・文化財関係者ら八十五人が出席した。
近藤氏は世界遺産条約が採択された一九七二年と比べ、国際情勢の変化やグローバリゼーションにより当初の目的が変容しつつあると指摘。「今後どう導いていくのかを考えるべきた。日本がそのプロセスに食い込み、リードしていくくらいの意気込みがないといけない」と強調した。
ともに登録延期の勧告を受け、最終的に登録された石見銀山遺跡(島根県)と、巻き返しがかなわなかった平泉の文化遺産(岩手県)については「石見は『環境に優しい鉱山』という、今の時代に合ったメッセージで大逆転できた。平泉は説明の難しさやストーリーの深さ、長さがあった」と明暗が分かれた理由を語った。
また、参加者からの質問に答える形で近藤氏は「世界遺産登録の数が増えると相対的な価値が下がると言う人もいるが、単なるコンクールとは違い、数の制限には反対」と主張した。