《シルクカントリーin桐生》 絹の国俳句ラリー 大賞 「人生は横糸?」 小沢昭一賞・上毛新聞社長賞・県現代俳句協会長賞・機音賞 ●松本夜詩夫さん講評
- 掲載日
- 2009/02/22
大賞
- 織姫や赤城颪を縦糸に
-
佐山 啓子さん(60)桐生市川内町
「強い赤城おろしのおかげで、この句が詠めた」と話す佐山さん赤城おろしが今日は強かったので、風を何とか句に詠み込もうとひらめいた。自宅周辺は、それほど風が強い場所ではないので、よけいにそう感じた。
町を歩いてみると、真正面から風が吹き付けてきた。「風を縦糸にたとえると、人生が横糸なのかと思えた。この句を詠めたのは、冷たい赤城おろしのおかげ。風が吹いていなければ、この句は生まれなかった」
俳句ラリーには、父で県現代俳句協会長賞になった川島喜由さんとともに参加。「自分でも参加したいと思っていたが、父の付き添いという気持ちも半分」と笑う。俳句の師は父。「これまでほめてもらったことはないけれど、今日、初めてほめてもらった。思い出に残る一日になった」
小沢昭一賞
- 母の背に父染し帯ふっくらと
-
勝俣 正江さん(58) 桐生市本町
亡くなった父が染めた着物を母に着せて、喜ばせたい気持ちを詠んだ。父の思いをうまく表現できた。
上毛新聞社長賞
- 鉾蔵の丈の風格春近し
-
堀田木綿子さん(77) 桐生市境野町
鉾蔵(ほこぐら)が高くすっと建つ姿に風格があり、そのときに一緒に見上げた青い空に春の訪れを感じた。
県現代俳句協会長賞
- 八木節に合わせ二月の床を踏む
-
川島 喜由さん(86) 桐生市堤町
「鉾座」での八木節は今までの八木節と違って聞こえ、思わず足を動かしてしまった。その気持ちを詠んだ。
機音賞
- 紗綾市の吊り雛ゆする風強し
- 桐 生 酒井 幸子
- 風光る鋸屋根のパン工房
- 桐 生 池田不二子
- 機町の旧家の名残古木梅
- 太 田 塚越 隆司
- 夫待たせ紗綾市に買ふ春ショール
- 太 田 塚越紀代子
- 南天の葉先やわらか日脚伸ぶ
- 桐 生 寺田美保子
- 絹ラリー春のスタンプ押しにけり
- 桐 生 遠藤 勝久
- 煉瓦館時を紡ぎてあたたかし
- 桐 生 山崎 恵子
- 機音を吸いし煉瓦の暖か
- 桐 生 大沢 慶
- 北窓を開く織姫八十才
- 前 橋 工藤 弘子
- 春なれや歴史散歩の機の街
- みどり 古田島哲雄
絹の国俳句ラリー●松本夜詩夫さん講評
俳句は目で見たものだけでなく、心でとらえるもの。大賞の佐山啓子さんの句はそれができていました。赤城おろしを縦糸にたとえたところが、風土性を表していると思いました。
上毛新聞社長賞の堀田木綿子さんの句は、桐生の鉾蔵を詠んだものですが「鉾蔵の丈の風格」という表現に、地元のものを誇りに思う桐生の人の気持ちが伝わってきました。
また「葉先やわらか」など、豊かな感性を感じさせる句が目立ちました。