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《シルクカントリーin桐生》 重伝建選定へシンポ 住民の手で世界へ

パネリスト
石見銀山生活文化研究所長 松場 登美さん
国立科学博物館産業技術史資料情報センター参事 清水 慶一さん
赤岩重要伝統的建造物群保存活性化委員会長 篠原 辰夫さん
本一・本二まちづくりの会 森  寿作さん
コーディネーター
上毛新聞社編集局長 萩原 哲
萩原哲上毛新聞社編集局長
萩原哲上毛新聞社編集局長

シルクカントリー群馬シンポジウムは、石見銀山生活文化研究所長の松場登美さん=島根県大田市大森町=が土地の風土や文化に根差した暮らしをテーマに基調講演。続いて松場さんら五人が登壇し、桐生市で重要伝統的建造物群保存地区の選定に向けた運動が進む中、魅力を生かしたまちづくりの将来像を探った。

―まず「本一・本二まちづくりの会」についてうかがいたい。

 この地区には戦災や震災に遭っていない建物が多数あり、その活用を考えた。市に伝統的建造物群(伝建群)指定の要望書を出したり、買場紗綾市(かいばさやいち)を始めた。こうした流れの中で二〇〇〇年に会を結成した。それまでは伝建群指定が終着駅だったが、協議を重ねた結果、重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)選定を最優先課題にした。

―桐生市には伝建群推進室があるが、重伝建選定に向けた市の方策は。

亀山 江戸時代から昭和にかけての建物がそろう町並みは、高い評価を得ている。この貴重な財産をまちづくりに生かそうと〇八年四月に、推進室を設けた。まちの形成に統一感はないが、普通の人が暮らした生活感のある地区だ。住民の熱い思いを受けて、重伝建選定を目指している。貴重な建物などの保存を図り、後世に残していく方針だ。

―県で初めて重伝建に選定された六合村赤岩地区の選定前と後の変化は。

篠原 赤岩地区は、約五十戸の養蚕農家が重伝建に選定された。その価値について初めは半信半疑だったが、世界遺産暫定リストにも登録され、今は多くの人が訪れている。花を植えるようになるなど住民の意識も変わった。観光客も増えたことから、ボランティアガイドを養成し、昨年は約二千人を案内した。

―専門家から見た桐生の魅力やアドバイスを。

清水 桐生は、のこぎり屋根工場などの集積度が高く良い町並みで、織物の街としてアピールできる。世界の織物の中心、ミラノは非常に良いものをつくる国際的なイメージがあるが、桐生は技術力は遜色(そんしょく)ないのに、ブランド化ができていない。織物文化の拠点の一つとして、ブランド力をつけるべきだ。

―松場さんは初めて桐生を訪れたというが、桐生の印象や将来の方向性は。

松場 自分のイメージは見えにくいというが、ここの住民も同じ。当たり前の風景というのは難しくて、近くにあるものは見えにくいものだ。品格のある日本らしい美しさを大切にしてほしい。そういうものの良さに気付く視点が大事だ。

―国際的なイメージ作りについて市長はどう考えるか。

亀山 群馬のブランド力は全国的にみて低いが、県の中では桐生のブランド力は高い。市民にとって、今の風景は当たり前。その良さに気付き、いかに自覚できるかが重要だ。市民が自信を持てば、全国、世界へとアピールできると思う。

重要伝統的建造物群保存地区
歴史ある建物と町並みについて、自治体が指定した伝統的建造物群保存地区の中から国が選定する。文化財保護法の改正で1975年に制度化され、選定された地区を実生活に即して、そのまま保存する取り組みを援護する施策の一つ。選定を受けると、対象となる建物の修理などに対して、国の補助が受けられる。本県では2006年7月に養蚕農家などの建物が残る六合村赤岩地区が選定された。
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