群馬産業遺産の諸相 (高崎経済大学附属産業研究所編)
- 掲載日
- 2009/08/09
「群馬の近代産業の歴史と現在に残る産業遺産」をテーマにした研究者15人の論文集。「富岡製糸場と絹産業遺産群」や中小坂鉄山(下仁田町)など日本の近代化を支えた本県の産業遺産を取り上げ、その歴史的価値や当時の社会環境、保存活用法を考察している。
世界遺産登録運動で脚光を浴びる養蚕製糸業は、「富岡製糸場と絹産業遺産群」の構成遺産についてだけでなく、民俗学的視点にも着目している点が大きな特徴。養蚕にかかわる群馬の方言や旧官営新町屑糸紡績所の勤務態勢といった忘れられつつある無形の産業遺産に迫っている。
かつて全国2位の産出量を誇った中小坂鉄山と群馬鉄山(六合村)など、これまであまり注目されてこなかった県内鉱工業にも光を当てている。また、高崎市の観音山周辺で採掘された亜炭は、戦前戦後に家庭用燃料として欠かせなかっただけでなく、富岡製糸場でも使われ、絹産業とのかかわりも深い。
本県の産業遺産研究に新たな側面から迫った一冊だ。