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伝統に新しい風を 富岡製糸場で群馬学シンポ 本県絹産業の未来考える

染織の伝統をどう引き継ぐかを話し合った群馬学連続シンポジウム=旧官営富岡製糸場
染織の伝統をどう引き継ぐかを話し合った群馬学連続シンポジウム=旧官営富岡製糸場

◎黒田さん 不便でも着る努力
◎今井さん 糸づくりに危機感
◎森山さん 地域でブランドを
◎高橋さん 県産の絹で制作も

本県に伝わる染織の歴史から何を学び取り、次世代へどう継承していくのか―。第18回群馬学連続シンポジウム「群馬の たくみ匠たち―繭・糸づくりから染・織まで」(県立女子大、上毛新聞社など主催)が5日、富岡市の旧官営富岡製糸場で開かれた。ものづくりや美術、歴史研究に携わる4人が、明治期に生糸貿易で栄えた象徴である同製糸場で繊維産業を守るための課題を語り合った。

(江原昌子)

染織の匠を紹介

始めに、国立美術館監事で前県立館林美術館長の黒田亮子さんが「伝統と創造 産業と芸術」と題して基調講演した。黒田さんはこれまで出合った美しい織物たちを画像で紹介しながら、「繭から織物になるまでに膨大な数の人がかかわっている。その中に得がたい技術を持った人もたくさんいて、その存在なくては優れたものは生まれない」と強調した。

本県に関係する染織の「匠」として桐生市のテキスタイルデザイナー、新井淳一さんと、新井さんに学び、同市を制作拠点にしている須藤玲子さんを挙げ、「桐生に蓄積された織物のノウハウを自分の中に入れ、新しい技術を投入して自らの精神を宿した布を作りだした」と評価。「優秀な技術があっても新しい風を吹き込む人がいないと次に続かない」と若い世代の台頭に期待を込めた。

4人が意見交換

続くシンポジウムは黒田さんと富岡製糸場総合研究センター所長の今井幹夫さん、元桐生地域地場産業振興センター専務理事の森山亨さん、アーティストの高橋理ひろこ子さんが登壇、県立女子大群馬学センター副センター長の熊倉浩靖さんが司会を務めた。

今井さんは、明治政府の一大事業として設立された富岡製糸場の役割について「工女の技術向上と、日本全国に器械製糸を普及させることだった」とし、本県には手作業の座繰り製糸がすでに普及していたため器械製糸がなかなか根付かなかった経緯を説明。富岡市内の養蚕農家が20軒を割り込み、地元の繭・糸づくりが危機に瀕ひんしている現状を語った。

森山さんは、桐生織物の技術革新と普及に貢献した森山芳平(1854~1915年)の孫で、進取の気性に富んだ祖父や交流のあった機業家たちの功績を紹介。さらに高度経済成長以降、大企業の下請け化していた地方産地の自立を提唱し、「地域でファッションを作り自分たちで楽しみ、世界のブランドになる時代が再び来つつある。今回のシンポジウムが新しく興す運動のきっかけになればいい」と投げかけた。

自らデザイン

和装を中心にさまざまな企業と斬新な製品を開発している高橋さんは、自らデザインした着物姿で登場した。「どんどん新しいものが欲しくなる中で、身の回りにあるもので十分幸せを感じられるというメッセージを込めて制作している。着物はものづくりの背景など伝えられることが多い。群馬には絹という素晴らしい素材があるので一緒に仕事をしてみたい」とアピール。

黒田さんは「和装の継承が一番の難題。着物は着る人によって自分のスタイルが作られる素晴らしい衣服なので、洋服よりは少々不便でも日常生活の中で着てみる、私たちの努力も必要」と締めくくった。

富岡製糸場(富岡市) 田島弥平旧宅(伊勢崎市) 高山社跡(藤岡市) 荒船風穴(下仁田町)