6日に「シルクカントリー群馬国際シンポ」 前橋「富岡製糸場と絹産業遺産群」の価値 世界的視野で検証へ
- 掲載日
- 2010/01/30
前橋市内で2月6日に開かれる「シルクカントリー群馬2010国際シンポジウム」は、国際的視点から本県の世界遺産候補「富岡製糸場と絹産業遺産群」の価値を検証する重要な場となりそうだ。参加する日本、イタリア、ポルトガル、チェコの絹産業や産業遺産の専門家はいずれも国際経験が豊富で、世界遺産登録に向けた課題がこれまで以上に鮮明に浮かび上がるだろう。
始めに講演する駐デンマーク大使の近藤誠一さんは2006~08年に国連教育科学文化機関(ユネスコ)日本政府代表部特命全権大使を務めた。07年に世界遺産登録された石見銀山(島根県)、08年に登録延期となった平泉の文化遺産(岩手県)の審議を世界遺産委員会で経験したことで知られる。近年の審査の動向を説明し、明暗を分けた両遺産の共通点・相違点や、これから登録を目指す国と本県が取るべき戦略について言及するとみられる。
続いて登壇する欧州大学院教授のジョバンニ・フェデリコさんは絹産業発達史の第一人者で、19世紀~20世紀初頭における生糸の三大輸出国(イタリア、日本、中国)を比較研究した著作を発表している。世界一の輸出量を誇った日本の生糸生産は本県の養蚕・製糸が支え、今も産業として存続しているのはまぎれもない事実だが、世界遺産登録の審査に大きな影響力を持つ欧州の専門家の間でどれだけ認識されているのか、フェデリコさんの発言で明らかになる可能性がある。
パネルディスカッションには両氏のほか、海外からの2人が加わる。国際産業遺産保存委員会ポルトガル代表のジョゼ・マヌエル・ロペス・コルデイロさんは同国の絹産業遺産に詳しく、繊維産業博物館の立ち上げにも参加した。チェコ・ブルノ工科大建築学部教授のヘレナ・ゼマンコヴァさんは、早くから繊維産業で栄え「チェコのマンチェスター」と呼ばれるブルノ市の遺産再生にかかわった。コーディネーターは県世界遺産学術委員会委員で東京大名誉教授の石井寛治さん。
パネリスト4人はシンポが始まる前の6日午前中に旧官営富岡製糸場を初めて視察する予定で、建物や歴史への理解を踏まえた率直な意見が期待される。
コルデイロさん、ゼマンコヴァさんは翌7日から始まる「富岡製糸場と絹産業遺産群」国際専門家会議(県、文化庁主催)にも出席。県世界遺産学術委員と同遺産群の価値などについて話し合った内容は、現在進められている推薦書作成に役立てられる。
同シンポジウムは2月6日午後1時から前橋市大友町の前橋マーキュリーホテルで。先着200人。申し込みは上毛新聞社内のフィールドミュージアム「21世紀のシルクカントリー群馬」推進委員会事務局(電話027・254・9988)へ。