「真正性」で十分な価値 旧富岡製糸場を視察 元ユネスコ日本政府代表部特命全権大使 近藤 誠一さん
- 掲載日
- 2010/02/13
「繰糸場が特に強い印象を受けた」と語る近藤さん
6日に前橋市で開かれた「シルクカントリー群馬2010国際シンポジウム」に伴い、来県した国内外の専門家4人が旧官営富岡製糸場を初めて視察、当時の建物がそのまま残っている点を高く評価した。視察メンバーの一人で、国連教育科学文化機関(ユネスコ)日本政府代表部特命全権大使を務めた駐デンマーク大使、近藤誠一さん(63)に具体的な評価を聞いた。
―実際に見た富岡製糸場はどうだったか。
これまで写真で見るだけだったが、予想以上に大きかった。サイズ、建物の雰囲気、(世界遺産登録の条件である)「真正性」の面で十分な価値があると感じた。特に強い印象を受けたのが繰糸場。明治、大正と時代に応じて生産工程を変えていた歴史が見て取れた。
―世界遺産登録を目指すにあたり、実物を見てもらうことの重要性は。
今回のシンポジウムのように、国内外の専門家になるべくたくさん見てもらって徹底的に議論することが大事だ。相互の理解を深めれば、登録審査の際に書類や写真で判断する世界遺産委員会の委員から、現場を見たのに近い評価をもらえる方向に近づくと思う。
―自身が審議を経験した石見銀山(2007年に世界遺産登録)は「緑の鉱山」という強力なメッセージで逆転登録を勝ち取った。本県の絹産業遺産群も環境の側面からアピールできるか。
通常、産業の発展は自然破壊を伴うと考えられてきた。絹産業が急速な近代化を招き、かつ環境に優しい産業であった証明ができればプラスになる。ただ、石見と違うのは「いい材料の一つ」ということだ。
―デンマークは世界遺産の数自体は少ない(4件)が、日本が学べる点はあるか。
首都のコペンハーゲンには穀物取引所や教会だった古い建物と最先端のビルが区域を分けて共存している。デンマーク人は歴史を愛する心と、北欧ならではのデザイン性の両方を大切にしていると感じる。