絹産業遺産群テーマにシンポ 地域で連携して歴史や価値PR 藤岡
- 掲載日
- 2010/03/01
旧官営富岡製糸場の今後についてパネリストが意見を述べたシンポジウム
本県の絹産業遺産群をテーマにした2つのシンポジウムが28日、藤岡市と富岡市で開かれた。遺産群の調査、保存活動、遺産を生かしたまちづくりを行う市民らが講師やパネリストとなり、遺産群の将来像について意見を交わした。県が目標とする2012年の世界遺産登録まであと2年。講師の言葉は熱を帯び、聴衆も真剣そのものだった。
藤岡市の「第1回『まゆの国』シンポジウム」は上州ふじおか絵巻の会が主催し、みかぼみらい館で開かれた。シルクをテーマにしたシンポジウムや、江戸期の藤岡についての基調講演が行われた。
シンポは、絹遺産を持つ地域同士の連携がテーマ。藤岡と前橋、桐生、富岡のまちづくりや地域活性化に取り組む団体の代表者5人がパネリストとなり、活動報告や意見交換を行った。
パネリストは「地域の人に絹遺産の歴史や価値を学んでもらい、自覚を持ってもらうことが大切」「繭や糸、織物のつながりや、発展の歴史を知ってもらい、連携してPRを行っていく」などと、意見を出し合った。
これに先立って行われた基調講演では、元県立文書館長の田中康雄さんが「江戸期藤岡の繁栄について」をテーマに、上州の養蚕や絹市の特徴などを分かりやすく解説。「藤岡は交通の要所であり、絹の生産地の結節点であったことなどから、経済的に繁栄した」と話した。同市の富士浅間神社所有の八坂神社のおみこしや「清温育」と呼ばれる養蚕飼育法を開発した「高山社」なども紹介した。
同市の養蚕や文化、歴史を伝えるキャラクター「まゆダーマン」のお披露目も行われ、子供たちが列をなして、記念撮影をする人気ぶりだった。
◎製糸場を通じて市民の誇り発信 富岡
絹遺産の活用などについて話し合うパネリスト
富岡の「ユネスコ世界遺産シンポジウム」は富岡ユネスコ協会(須藤洋一会長)が主催、富岡市生涯学習センターで開かれ、会員ら約50人が参加した。
シンポジウムには県ユネスコ連絡協議会の矢島祭太郎会長をはじめ、世界遺産登録推進活動に携わる行政職員や市民ら計4人がパネリストとして出席。「富岡製糸場の世界遺産本登録に向けて今問われること」をテーマに、それぞれの立場から意見を述べた。
パネリストは「世界遺産の本質である世界平和と環境保全の精神を忘れてはならない」「富岡市民の誇りを製糸場を通じて発信していくことが必要」などと力説。聴衆は真剣な表情でそれぞれの意見に聴き入っていた。
シンポジウムは会員の資質向上が目的で、世界遺産関連の知識を深めるとともに本登録に向けた機運を盛り上げるのが狙い。開催は昨年に続いて2回目で、一般にも参加を呼び掛けた。