富岡の生糸 仏輸出 今秋、現地で製品化 製糸場創業時を“再現”
- 掲載日
- 2010/08/13
富岡市や養蚕農家、加工業者などでつくるシルクブランド協議会(会長・岡野光利市長)は今秋、同市産の繭からできた生糸をフランス・リヨンに輸出する。生糸はリヨンの織物業者が製品に加工し、富岡に持ち帰って活用する。旧官営富岡製糸場の創業当初と同様の繭や生糸の流れを再現し、世界遺産登録を目指す製糸場の価値向上やアピールにつなげる考えだ。
1872(明治5)年の製糸場創業当初は、富岡市などから繭を集めて生糸を作り、全量をリヨンに輸出していた。
こうした歴史を踏まえ、シルクブランド協議会は「創業当時のフランスへの輸出のシステムを復活したい」と計画。リヨンの織物業者と製品の種類やデザイン、生糸の輸出量などについて調整している。
フランスで加工した製品は市内に持ち帰り、記念品としての活用や展示を検討している。
市は製糸場の稼働再開を将来的な目標に置いて、保存や整備を進めている。その目標に向け、協議会は2008年、市内すべての養蚕農家(18戸)から全量の繭を製糸場で直接受け入れる「荷受け」を約40年ぶりに復活した。
それ以降も定期的に荷受けを続けており、08年度は5・9トン、09年度は6・4トンを受け入れた。今回輸出する生糸は荷受けした繭を使う。
生糸への加工は当面、協議会会員の碓氷製糸(安中市)が担う。ただ、関係者は製糸場内で使われないまま残る自動繰糸器の再稼働にも期待を寄せている。
協議会事務局の市教委世界遺産推進課は「工場として復活できれば、製糸業や産業遺産のシンボルになる」としている。