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伊勢崎・境島村の大型養蚕家屋 「田島家」国史跡に申請へ 「絹産業遺産群」に参加も 市教委が調査

田島家の全景。右にあるのが母屋兼蚕室
田島家の全景。右にあるのが母屋兼蚕室

伊勢崎市教委は10日までに、蚕種生産で栄えた境島村地区を代表する大型養蚕家屋、田島健一さん(80)宅を国指定史跡に申請する方針を固めた。江戸末期の建造物で、屋根に換気用の櫓(やぐら)を付けた養蚕家屋の原点といえる存在。申請時期は未定だが、指定されれば県が世界遺産登録を目指す「富岡製糸場と絹産業遺産群」に加わりたい考え。養蚕、製糸、織物業の出発点となる蚕種の産地が入れば本登録に弾みがつきそうだ。

田島家は明治初期に技術書「養蚕新論」を著し、通気を重視する「清涼育」を唱えた田島弥平が1862(文久2)年ごろ建てた家。母屋兼蚕室は間口25メートル、奥行き9メートルの2階建てで屋根には総櫓が付いている。この理論とともに櫓付き家屋は同地区から全国に広まったとされる。

市教委は、国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)選定を視野に、2007年度から同地区の櫓付き養蚕家屋を調べてきた。これまでに田島家など20棟近くの調査が終わり、本年度内に報告書をまとめて重伝建の説明会を開く予定だが、住民全体の合意には時間がかかることも予想されている。

こうした中、田島家当主で島村地区の世界遺産登録を目指す「ぐんま島村蚕種の会」会長の健一さんから、田島家を単体で国史跡に申請する要望が市教委に出されたため、重伝建と並行して取り組んでいくことにした。

調査の時期や方法は今後詰めるが、田島家が保存する「養蚕新論」の版木(市指定重要文化財)なども合わせて申請する方針。市教委文化財保護課は「建物の価値だけでなく、田島家が養蚕の発展に果たした歴史的かつ学術的な役割を検証した上で申請したい」としている。

元県蚕糸課長で蚕種の会事務局の関口政雄さん(77)は「島村地区は養蚕、製糸、織物という本県の絹の物語の出発点。その価値をアピールして世界遺産につなげたい」と、早期の指定に期待を寄せている。

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