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蚕糸・絹業グループ化制度 取扱繭量3割止まり 直接補助は本年度終了 養蚕農家の撤退懸念

養蚕農家や製糸、織物業者らをグループ化して支援する国の補助制度「蚕糸・絹業提携支援緊急対策事業」で、昨年度までに本県関係で6グループが設置されたが、その取扱繭量は全体の3割にとどまることが県の調べで分かった。来年度から農家への直接の補助がなくなり、組織への支援に一本化されるため、養蚕を続けるにはグループへの参加が不可欠となる。県は一般的な養蚕農家の受け皿となるグループの結成を民間に働き掛け、農家の加入率向上を進める。

蚕糸・絹業提携支援緊急対策事業は、付加価値の高い純国産絹製品を生産する態勢を整え、農家に養蚕を続けられるだけの利益を配分できるようにするのが目的。2008年度に始まった。本年度までに養蚕から製品の製造、販売までを一貫して取り組めるグループづくりを進める。結成から3年間はグループへの補助があるが、その後は打ち切られる。

本県関係では08年度に高崎市の絹問屋「絹小沢」を中核企業にしたグループが承認されたのを皮切りに、昨年度までに6グループが組織された。本年度も新たに1グループが誕生した。

だが、グループに加入していない農家が多く、6グループの繭の取扱量は昨年度、県産繭の31%にとどまった。農家の加入促進が課題となっており、幅広い農家が参加できるよう、県などが新しいグループを立ち上げる準備を進めている。県はほかに県内6カ所で事業の説明会を開き、「参加率100%」を目標に農家への働き掛けを強める。

絹小沢などが08年度に設置したグループは本年度いっぱいで国の補助が打ち切られる。担当者は「補助がなくなれば商品を値上げせざるを得ない。不景気で販売も振るわず厳しい」と漏らす。だが、国産に価値を求める人も多いといい、「特に県オリジナル品種の蚕ならば、養蚕が可能な価格で繭の買い取りはできる」と展望を語る。

西毛の養蚕農家は「グループに入っているが、いつまで高い繭価格で買ってもらえるか不安。若者が始められる手取りがないと産業としての養蚕は終わってしまう」と危機感を募らせる。

グループ化により、将来に向けて意欲を持つ農家が残る一方で、養蚕から撤退する農家が増える可能性がある。国産繭の希少性が高まることも期待される。県蚕糸園芸課は「県オリジナル品種の蚕などの普及を進め、本県の伝統産業である養蚕を守るため、積極的に支援したい」としている。

◎収量40年で200分の1 安価な外国産流入で

中国を中心とする外国産の生糸や絹製品の大量流入で、国産繭価格は1976年ごろから生産費を下回るようになった。現在も、行政による繭への補助金に頼らざるを得ない状況が続いている。

養蚕をめぐる環境は厳しく、県内の繭の収量はピークだった68年の2万7440トンが2009年には139トンになり約200分の1に激減。養蚕農家の戸数も68年の7万2100戸から09年には373戸にまで減った。平均年齢が約70歳と高齢化も進んでおり、今後さらに減少が見込まれる。

本県の伝統産業である養蚕を守るため、県はグループ化の支援と並んで、高機能な絹糸や、有用物質を生産できる遺伝子組み換え蚕(GM蚕)の開発にも取り組んでいる。

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