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「晩秋蚕」守れ 扇風機、よしず、屋根の水まき 養蚕農家 残暑対策に苦慮

扇風機を回して養蚕に取り組む松井さん
扇風機を回して養蚕に取り組む松井さん

連日の厳しい残暑が養蚕にも悪影響を与えている。多くの農家にとって今年最後の蚕期となる「晩秋蚕」が今月上旬に始まったが、近年まれにみる高温続きに苦慮。扇風機による送風や遮光処置を施すのが精いっぱいで、「暑さはいつまで続くのか」と繭の出来を懸念する声が上がっている。

前橋市河原浜町の松井喬(たかし)さん(63)は、蚕室の屋根の上に10センチほど浮かせてよしずをかけ、直射日光が当たるのを避けている。室内は28度になるように3台ある扇風機を稼働させたり、窓を開け放って風通しを良くするが、「これ以上はやりようがない」と頭を抱える。

8月の初秋蚕は高温で弱った蚕が繭を作る際に死んでしまうケースが多かったといい、「普通なら晩秋蚕はストーブで温めるくらいだが、異様な暑さなので初めてよしずをかけた」と話す。

「防暑対策を長年研究してきた」と話すのは太田市薮塚町の斎藤茂雄さん(79)。東毛地域は初秋蚕を休止する傾向にあるが、この時期も暑さに悩まされているという。よしずや屋根の水まきなどさまざまな手法を試した結果、防暑ネットを施したビニールハウスを自作し、扇風機を回しながら飼育している。「気温だけでなく、少雨も桑に影響が出るので気になるところ」と心配は尽きない。

県蚕糸技術センターによると、養蚕に適する温度は稚蚕のころは27~30度と高く、農家に配られる4~5齢になると平均22~25度。極度な高温は抵抗力の低下を招き、細菌やウイルス性の病気にかかりやすくなる。小林初美主任研究員は「繭の中で蚕が死んだり、糸にする時にほぐれにくくなったりする。風を送るだけでも違うので対処してほしい」と話している。

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