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GM蚕 実用化へ農家飼育 遺伝子組み換え 繭から有用物質 医薬など新産業期待 世界初

有用物質を大量生産できる遺伝子組み換え蚕(GM蚕)の実用化を進める県などは4日、前橋市内の養蚕農家が16日から県蚕糸技術センター内の施設で実用飼育を始めると発表した。GM蚕の飼育に養蚕農家が加わるのは世界初で、6戸でつくる「前橋遺伝子組換えカイコ飼育組合」が取り組む。GM蚕を利用した新産業の創出を進める協議会も4日発足し、衰退を続ける蚕糸業の維持存続に向けた動きが活発化してきた。

GM蚕は何らかの働きを持つ遺伝子を卵に注入して作られ、その繭や糸は診断薬や医薬品、高機能シルク素材への活用が期待できる。従来の絹産業に加えて新たなビジネス創出の手掛かりにしようと、県と国が2000年から研究を進めてきた。

今回の飼育は、県と共同研究契約を結んでいる民間企業の免疫生物研究所(藤岡市)が前橋遺伝子組換えカイコ飼育組合に委託する。法律に基づき拡散防止措置が施された施設内で12月にかけ、有用タンパク質を生成するよう遺伝子が組み換えられた蚕6千匹を繭まで育てる。

同社は繭から有用タンパク質を抽出し、診断薬の原料となる抗体の精製などに使う。蚕は(1)年間を通して飼育できる(2)扱いやすい(3)不純物が少ない―との理由から有用物質の生産に適しており、清藤勉社長は「安定性や精製度をテストし、来春以降に(有用タンパク質の)販売のめどをつけたい。診断薬や動物用医薬品の開発にも取り組みたい」と述べた。

実用飼育は来年以降も継続し、将来的には稚蚕共同飼育所や各農家の蚕室で実施できるよう手続きを進めているという。同飼育組合の糸井文雄組合長は「この新しい事業を成功させ、次世代が養蚕に取り組んでいけるような基礎ができればいい。県内に広めていきたい」と話した。

飼育組合と免疫生物研究所、前橋市農協は4日、GM蚕の実用化を推進するため、「M&I新需要創造協議会」を設立した。GM蚕を使った新産業の創出について検討していく。

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