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「富岡製糸場と絹産業遺産群」Web

「清温育」発祥・高山社(藤岡) 全面公開へ整備進む 桑貯蔵庫や蚕室跡調査

堆積物やごみを取り除き、深さが判明した桑貯蔵庫を見学する来場者
堆積物やごみを取り除き、深さが判明した桑貯蔵庫を見学する来場者

明治、大正期に全国に普及した養蚕技術「清温育」の発祥地で、世界遺産登録を目指す「富岡製糸場と絹産業遺産群」を構成する国史跡、高山社跡(藤岡市高山)。母屋と周辺の敷地が昨年10月までに個人から市の所有となり、母屋1階が公開されている。全面公開に向けて周辺環境の整備のほか、地下式桑貯蔵庫や蚕室など建物跡の調査が進んでいる。

同市は今年2月から3月にかけて母屋北側の桑貯蔵庫のほか、換気用の天窓が四つあった平屋建て蚕室など跡地に残る石垣を詳しく調べた。  桑貯蔵庫は地中に穴を掘り、東西4メートル、南北4・5メートルに石を積んだ構造。石や土砂、ごみが堆積していたが、深さは2・6メートルと判明した。  桑貯蔵庫には、かつて桑が雨にぬれないよう上屋があったことが分かっている。地元住民への聞き取り調査によると、東側に入り口があったという。市は今後、上屋の構造についても調査していく。

◎反り返る石垣
 母屋周辺に4、5カ所残る建物跡の石垣の調査では根石部分を掘り返した。高さは70センチほどあり、下部から上部にかけて反り返る構造で積み上げられていることが明らかになった。  市教委文化財保護課の寺内敏郎課長補佐は「石垣は丁寧に造られており、専門の熟練工を雇うだけの財力が高山社にはあったと推察できる。反りの意味については今後、類例を検証していく必要がある」としている。

市は昨年12月、歴史や地理、建築の専門家5人による高山社跡保存管理計画策定委員会を設置。本年度中に策定書をまとめ、来年度の整備検討委員会(仮称)につなげて建物を修復していく計画。見学コースも整備し、建物内に養蚕道具を展示したり、解説パネルを置くなどして高山社が養蚕の発展に果たした役割をアピールする。

◎ガイドを養成
 高山社跡では昨年から、市と県の嘱託職員が平日に交代で常駐。来場者を案内したり、草刈りなどを行ってきた。

市は本格公開に向け、市民団体「高山社を考える会」(小坂裕一郎会長)を通じて2月からガイド養成講座を開催。3月下旬には同会に解説部会が発足して土、日曜と祝日にボランティアで見学者を案内している。


下部から上部へ反り返っている構造の石垣
下部から上部へ反り返っている構造の石垣

見学場所は母屋1階や桑貯蔵庫などで、母屋2階は床に火鉢をつるす穴が空いていることなどから非公開。2階には、高山長五郎が考案した清温育の技術を示す貴重な構造が残っており、同課は「安全性を確保した上で将来的には2階も公開していきたい」と話している。  高山社跡の問い合わせは同課(電話0274・23・5997)へ。

【高山社跡】高山長五郎(1830~86年)が設立した養蚕教育機関「高山社」の発祥地。長五郎は換気と保温を取り入れた「清温育」を唱え、84年に養蚕改良高山社を設立した。事務所と伝習所は藤岡市中心部に移転、全国から生徒を受け入れて清温育を広めた。

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