技術革新で世界席巻 世界遺産大学 森英恵さん、川口淳一郎さん「服飾」と「宇宙」語る
- 掲載日
- 2011/08/13
近代の技術革新と服飾文化の発展に貢献した富岡製糸場への理解を深める特別講演「世界遺産大学―ファッションと技術の夢」は19日、東繭倉庫で開かれる。ファッションデザイナーの森英恵さん、宇宙航空研究開発機構教授で小惑星探査機「はやぶさ」プロジェクトマネジャーの川口淳一郎さんという新時代を切り開いた識者を招き、ファッションと最先端技術の側面から富岡製糸場の核心に迫る。
1872(明治5)年、明治政府の国策として設立された富岡製糸場は生糸増産のための技術革新を次々と成し遂げた。日本の生糸生産量は劇的に向上し、1930年代には世界市場を席巻。輸出された生糸は主に米国でストッキングなどに加工され、絹の大衆化を促進させるなど、製糸場の技術革新は世界の服飾文化の発展にも大きな役割を果たした。
第1部では、世界のファッション界を舞台に「日本の絹」の素晴らしさを表現してきた森さんが「絹とファッション」をテーマに講演する。
50年代の活動開始以来、森さんは"東と西の融合"を一貫して追求。西洋の形の中に東洋の美を盛り込む独自のスタイルで世界的にも確固たる地位を築いた。自身の創作活動に欠かせない絹の魅力を語る。
第2部は「未知の夢―先端技術の苦闘と感動」と題して、宇宙開発分野の最先端を走る川口さんが講演する。
川口さんがプロジェクトの指揮を執った「はやぶさ」は度重なるトラブルを乗り越えて地球に帰還。世界で初めて小惑星の微粒子を持ち帰る快挙を成し遂げ、そこに至るまでの研究者たちの奮闘は日本中の感動を呼んだ。研究者の立場から最先端の技術開発にかける希望と苦闘を語る。
◎絹の魅力とは 森英恵さん 伝統のエレガンス表現
世界遺産大学で講演する森英恵さんに絹の魅力、世界遺産運動や富岡製糸場について聞いた。
―デザイナーからみた絹の魅力は。
しなやかで優雅な素材。日本の絹は外国に自慢できる。戦後、市場の見学のためニューヨークへ出掛けた。デパートの地階で、日本製ブラウスが1ドルで売られているのを見てショックを受けた。日本はこんなもんじゃないという思いがエネルギーになり、米国進出を決めた。私たちの伝統的なエレガンスを表現したいと考え、その布地は"絹"だと思った。
―洋服の分野で世界進出し、「東西の融合」をテーマに仕事をしてきた。 パリでは東洋人として初めてオートクチュール組合に所属した。フランスをはじめ、米国、インド、中国など世界で仕事をしてきたが、常に「私は日本人よ」と意識してやってきた。
その中で絹が果たした役割は大きく、まさに宝物。それを自分流にデザインして海外にアピールしてきた。
―国産の絹のあり方について。
だんだん減少していくのは残念。カシミヤが残っているように、絹をどう守っていくかが重要だ。絹産業の大切さを知ってもらい、地域を挙げて保存活動を進めていくことが大事。その意味で、世界遺産運動はすてきな活動だと思う。
―今回、富岡製糸場を訪れる。
富岡製糸場に行くのは初めてで非常に楽しみ。フランス人が技術指導を行ったと聞いており、興味深い。ここでファッションショーを開くのもおもしろいのではないか。私の長い経験から言えば、目で楽しむ、体中で感じる見せ方が大事。良いものを作れば、ニューヨークやパリなど世界へ持っていくのもいい。