「絹磨き上げ世界に」 富岡製糸場舞台に世界遺産大学 森英恵さん、川口淳一郎さん講演
- 掲載日
- 2011/09/20
富岡製糸場の役割と価値を発信した世界遺産大学の講演会
世界遺産登録を目指す旧官営富岡製糸場(富岡市富岡)を舞台にした連続イベントは最終日の19日、デザイナーの森英恵さん、小惑星探査機「はやぶさ」プロジェクトマネジャーの川口淳一郎さんが講演する「世界遺産大学」などが行われた。2人は「絹は日本のルーツ。磨き上げて世界に見せて」(森さん)などとファッションと先端技術の観点から、製糸場の果たした役割や現存することの価値を発信。「NECフィールディング世界遺産劇場」や「技と美 日本の絹展」と合わせ、4日間で延べ1万2000人が来場した。7面に特集
世界遺産劇場実行委員会、上毛新聞社など主催。
世界遺産大学は、生糸の大量生産・輸出により、世界の服飾文化の発展に貢献した製糸場にちなみ「ファッションと技術の夢」と題して行われ、製糸場の果たした役割を検証した。 森さんは自身が「日本とは」を追求し、アゲハチョウをテーマにしたコレクションを作り上げたことを紹介。「日本人のデザイン、日本の絹で、日本人が縫い上げた物を作りたかった。どこにもない、独自の物としてアメリカ人に好印象を与えた」と、オリジナルが生み出す価値に触れた。
世界で活躍した経験から「ルーツ」の大切さも繰り返し言及した。「絹は日本のルーツ。製糸場の培った絹を磨き上げてほしい。絹は"私たちの物"という大切な存在」と語った。 一方、川口さんも、はやぶさの発端を「着想も手段も目的もオリジナル。世界のトップに立ちたいという意気込みがあった。富岡製糸場と同じではないか」と関連づけた。
はやぶさの回収カプセルが富岡市内で製造されたことや、日本のロケット開発の父と言われる糸川英夫が中島飛行機出身だったことを挙げ、本県とのつながりや技術継続の大切さに言及した。ものづくりは現場に出てこそ分かるとし、「製糸場を残すことは現場を保存すること。足を運んで分かることは多い」と登録運動にエールを送った。
世界遺産劇場の第2夜となったこの日、西繭倉庫前の特設ステージでは歌手で声優の坂本真綾さんのコンサートも開かれ、優しい歌声を響かせた。
来場者は「赤れんが前のステージが幻想的」(神奈川県38歳男性)、「ライティングに映える製糸場の新たな魅力に気付けた」(太田市39歳女性)などと、1872(明治5)年から残る建物群が作り出した空間に感激していた。
岡野光利市長は「幅広い世代の人が全国から訪れ、登録へ大きなプラスになる」と、手応えを語った。