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「富岡製糸場と絹産業遺産群」Web

4資産に絞り込み 富岡製糸の推薦書 世界遺産候補で県 密接な関連重視

本県の世界遺産候補「富岡製糸場と絹産業遺産群」の構成資産について、県がこれまでの7資産から、富岡市の旧官営富岡製糸場と密接な関連を持つ4資産に絞り込んで国連教育科学文化機関(ユネスコ)に提出する推薦書案を検討していることが、25日分かった。文化庁とともに29、30日に開く国際専門家会議に4資産案を諮り、世界文化遺産を審査する国際記念物遺跡会議(イコモス)の専門家ら3人に判断を仰ぐ。

4資産は県世界遺産学術委員会(委員長・岡田保良国士舘大教授)が現時点で最良と考える資産で、富岡製糸場のほか、高山社跡(藤岡市)、荒船風穴(下仁田町)、田島家住宅(伊勢崎市)。  県はこれまでの国際会議や学術委員会の意見をはじめ、構成資産を精選する近年の世界遺産登録の状況を踏まえ、推薦書の作成に取り組んでいる。 絹産業遺産群は世界文化遺産の中の産業遺産に当たり、地域的な広がりのある遺産をまとめて登録するには、中心となる製糸場との緊密な関係を証明する必要があるとされる。

学術委員会は、欧米に生糸を大量輸出し、絹を世界に広めた富岡製糸場が1872(明治5)年の建築当時の状態で残る点を重視。製糸に必要な高品質な原料繭の大量生産を可能にした技術革新で、製糸場との直接の関わりを証明できる資産を中心に、世界遺産としての顕著な普遍的価値を見いだそうとしている。

富岡製糸場は民間に払い下げられた後、品質のそろった繭を安定的に確保するため、蚕の一代交雑種の研究を行った。交雑種の飼育普及で養蚕教育機関の高山社、蚕種(卵)を冷温貯蔵して蚕の複数回飼育に貢献した荒船風穴、蚕種製造の田島家の3資産は製糸場との協定書が残っており、養蚕製糸における技術革新の連携を証明できる。これに対し、碓氷峠鉄道施設(安中市)、富沢家住宅(中之条町)、赤岩地区養蚕農家群(同)の3資産は、製糸場との直接の関係を証明する資料が見つかっていない。

岡田委員長は「世界遺産登録の近道は4資産と考えている。他の3資産も非常に良いが、推薦書のストーリーを組み立てる上で難しい。海外の専門家がどう判断するかが焦点になる」と指摘。県世界遺産推進課は「国際会議の結果を受け止めて文化庁とともに資産を確定し、推薦書の完成度を高めたい」と話している。

富岡製糸場(富岡市) 田島弥平旧宅(伊勢崎市) 高山社跡(藤岡市) 荒船風穴(下仁田町)