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《キーマンの書棚》 製糸に懸けた少女「精解 富岡日記―富岡入場略記」 (和田英著、今井幹夫編、県文化事業振興会)

「17歳の少女の生きざまが詰まっている」と話す関さん
「17歳の少女の生きざまが詰まっている」と話す関さん

著者の和田英は、1873(明治6)年に17歳で富岡製糸場に入り、1年3カ月を過ごした。その後、地元の長野県松代に戻り、製糸業の指導者として活躍。本書は和田英が53歳の時に富岡時代を振り返り、記録したもの。

観光客らに製糸場の歴史などをガイドする中で「解説員にとって必読の書。製糸場を理解する上で、一般の人にも最適ではないか」と話す。

寸暇を惜しんで仕事に励み、地元で指導者として富岡での経験を伝えた和田英を「模範的な工女」と評価する。政府が富岡製糸場を造った理由の一つに技術を広げることがあった。「国が定めた趣旨にぴったり合ったのが和田英。ひたむきに製糸に懸けた少女の生きざまが日記に凝縮されている」という。

工場の実態を体験者自らが具体的に語っている点で歴史家の評価も高い富岡日記。「女性労働史や女性生活史の面から製糸場を知る切り口になる」

とはいえ、堅苦しい内容でないのも魅力。余暇の過ごし方や食べ物の様子、いでたちなどが紹介されていて、エピソードも豊富。「喜んだり、悲しんだり、悔しがったりする場面もあって、楽しく読める。明治の初めにこういう女性がいたということを知ってほしい」と期待する。

豊富な注釈や解説も本書の特長。編者で富岡製糸場総合研究センターの今井幹夫所長が研究に基づき、史実も考証して日記の内容を補足、説明している。

現在も月に何度かガイド役をこなす関さん。「製糸場を訪れ、富岡日記を手に取って」と呼び掛けている。

富岡製糸場(富岡市) 田島弥平旧宅(伊勢崎市) 高山社跡(藤岡市) 荒船風穴(下仁田町)