県産繭100トン割れ 最盛期の300分の1 養蚕農家300戸切る 11年見通し
- 掲載日
- 2011/11/29
2011年の県産繭の生産量見通しは100トンを割り込み、過去最少の約90トンとなることが28日、県の調査で分かった。全国の4割を占めるが、ピーク時の300分の1に減少。養蚕農家も初めて300戸を切る見込みだ。13年度には養蚕農家と製糸・織物業者の提携グループに対する国の補助金が終了、養蚕はさらに厳しい状況に追い込まれる。本県絹産業を象徴する旧官営富岡製糸場が14年の世界遺産登録を目指す中、養蚕という「生きた遺産」は存亡の瀬戸際に立たされている。
1968年に戦後ピークの2万7440トンあった本県繭生産量は、98年839トン、03年350トン、08年161トンに減少。10年は111トンで、今年初めて100トンを割り込む。8万戸以上あった養蚕農家も同じペースで減り、昨年の314戸から今年は260~270戸になるという。
中国産を中心とする安価な外国産生糸の流入や、養蚕農家の高齢化と担い手不足により国産繭は減少が続く。08年のリーマンショックと今年3月の東日本大震災による景気低迷がさらに拍車を掛け、「嗜好(しこう)品であるシルク製品の需要が落ち込んだ」(県蚕糸園芸課)。
国産ブランドの確立で生き残りを図るため、国は08年度から「蚕糸・絹業提携支援緊急対策事業」を開始。養蚕農家と製糸、織物業者をグループ化し、結成後3年間は補助金を支給する制度で、10年度末の申請締め切りまでに本県関係で8グループが誕生した。
だが、08年度に承認されたグループは昨年度末で補助金が打ち切られた。最終的に13年度には全グループへの支給が終了する。その後の国産生糸価格は1キログラム当たり1万5千~2万円程度になる見通し。各グループは品質で差別化を図ろうとしているが、数千円とされる中国産を相手に苦戦が予想される。
関係者は繭生産量と養蚕農家の減少を「絹文化の危機」と指摘。8グループ全てに参加する碓氷製糸農業協同組合(安中市松井田町)の高村育也組合長は「収量の減少は死活問題。何らかの新たな支援がなければ、製糸業も養蚕も早々に立ちゆかなくなる」と公的支援による保護を訴える。
県蚕糸園芸課は「優良繭の開発や販路の拡大など、できる限りの支援をしていきたい」と話している。