5000年前に冷気利用? 蚕種貯蔵した下仁田・荒船風穴 岩陰から縄文土器2片
- 掲載日
- 2011/12/01
家屋の概要が記された説明板
世界遺産登録に向け、下仁田町教委が保存管理調査を進めている国史跡「荒船風穴(ふうけつ)」(同町南野牧)で30日までに、冷気が吹き出す岩陰の小さな風穴から、縄文土器の破片2点が見つかった。発見した町歴史民俗資料館ふるさとセンターの秋池武所長は「文様から約5千年前の縄文中期の焼町(やけまち)式土器とみられ、縄文人が冷気を利用していた可能性を示す貴重な史料」と分析している。明治後期から昭和初期にかけて蚕の卵(蚕種)を自然の冷気を使って冷蔵、繭の大量生産に貢献した荒船風穴の歴史をひもとく手掛かりになりそうだ。
秋池所長によると、土器片はかめの一部とみられ、10月下旬に発見。2点とも蚕種貯蔵用風穴3基のうち2号風穴上部の巨岩にある小さな穴の中で見つかった。内部は幅約2メートル、奥行き約3メートルで、人が立てる空間が広がり、1点はその底部で発見。上部からは反射光が差し込む。もう1点はその奥に続く狭い空間の岩塊の間から見つかった。そこからは現在も5度ほどの冷気が吹き出している。
秋池所長は「(手前の1点は)故意に外から投げ入れた可能性も否定できないが、縄文人が山間部では岩陰を利用して生活していたことから、この場所も縄文時代に利用されていた可能性が高い」と説明している。
町教委文化財保護係によると、土器片が見つかった岩穴周辺は夏場に草が生い茂り、見学者が通らない場所のため、これまでに内部を調査したことはなかった。
今回の調査は、昨年2月に荒船風穴が国史跡に指定されたことを受け、町教委が保存管理計画策定委員会を組織して進めていた。翌月に1号風穴の岩の崩落が見つかり、文化庁の補助を受けて今年9月から風穴の管理棟跡に戦後建てられた建物やフェンスの撤去、崩れた岩の取り出しと保管、風穴の清掃や除草、3次元調査、試掘をしてきた。
縄文時代に詳しい国学院大の小林達雄名誉教授は「全国でも風穴と結びつく岩陰遺跡は自分の知る限り初めて。縄文人が癒やしの場所、現代のパワースポットのような聖地として認識していたと言えるのではないか。とても興味深く貴重」と話している。
調査では1、2号風穴に堆積している土砂を取り除いたところ、冷気が出ていることも判明した。2号風穴の試掘で、明治後期の石積み建築時に使ったとみられる岩盤に溝を切る道具1点が見つかった。
5~7日に現地説明会を開き、調査成果を報告する。参加希望者は町教委文化財保護係(電話0274・82・5345)へ申し込む。