世界遺産候補 田島家住宅 国史跡指定を申請 推薦へ大きく前進 伊勢崎市教委
- 掲載日
- 2012/01/18
国史跡に申請する田島家住宅。昨年10月に世界遺産の専門家の視察を受けた
本県の世界文化遺産候補「富岡製糸場と絹産業遺産群」を構成する4資産の一つで江戸末期建築の大型養蚕家屋、田島家住宅(伊勢崎市境島村)について、伊勢崎市教委は今月にも県を通じて文化庁に史跡指定を申請する方針を固めた。24日の教育委員会定例会で了承を得る。世界遺産登録には構成資産が国の法律によって保護されている必要があり、田島家住宅が国史跡に指定されれば同遺産群は条件が整い、2012年度中の国連教育科学文化機関(ユネスコ)への推薦に向けて大きく前進する。
国史跡として申請するのは、田島弥平(1822~98年)が確立した換気を重視した養蚕技術「清涼育」を実践するために63(文久3)年に建てられた櫓(やぐら)付きの母屋のほか、桑場、蚕の卵を保管した種蔵、文庫蔵、表門などを含む約4千平方メートル。
市教委によると、田島家の価値としては、(1)清涼育の確立(2)櫓付き総2階建て住宅の開発(3)イタリアへの蚕種直輸出(4)イタリアから持ち帰った顕微鏡による蚕の病気の研究―が挙げられるという。
申請を受け、国は文化審議会で史跡指定の可否を協議し、了承されれば7月ごろ官報告示となる見込み。市教委文化財保護課は「価値を明確にして国史跡指定を確実にしたい」と話す。
申請書を文化庁へ進達する県教委文化財保護課は、田島家住宅を模範にした松ケ岡開墾場(山形県鶴岡市)が1989年に国史跡となっていることを指摘し、「田島家は近代養蚕農家の原点であり価値は十分。満を持して申請する」としている。
「富岡製糸場と絹産業遺産群」を構成する旧官営富岡製糸場(富岡市)と荒船風穴(下仁田町)、高山社跡(藤岡市)の3資産は、いずれも国史跡や国重要文化財に指定済み。