富岡製糸場と絹産業遺産群 絹の大衆化に普遍的価値 登録へ資産絞り込み 新冊子作製、伝道師と連携
- 掲載日
- 2012/02/04
県が作製した世界遺産候補の4資産と価値を紹介するリーフレット
「富岡製糸場と絹産業遺産群」の世界遺産登録に際し、証明が求められる顕著で普遍的な価値。県は国際専門家会議の議論などを踏まえて「日本の近代化に貢献」から「養蚕製糸の技術革新・交流」に変更し、構成資産を4資産に絞り込んだ。これに伴ってホームページやリーフレットなどを本年度中に更新。ボランティア団体と連携し、日本の繭と生糸の大量生産技術が世界に伝わり、絹の大衆化をもたらした意義を県民に伝えていく。
県は1月、A3二つ折りのリーフレットを製作。表紙には「世界を変えた日本の技術革新」を掲げた。世界遺産としての価値や4資産を写真や図表とともに紹介している。
リーフレットは、紀元前の中国で絹が生み出され、19世紀の西洋で大量生産が始まったことを紹介。幕末に開国した日本はフランスから最新技術を取り入れて富岡製糸場を建設、製糸業の近代化を推進した。同時に養蚕の技術革新にも取り組んで原料繭の大量生産に成功した結果、20世紀初めに世界中に安価で良質な絹を輸出し、高級繊維だった絹の大衆化に貢献したことの重要性を記している。
ボランティア250人で構成する富岡製糸場世界遺産伝道師協会(近藤功会長)が1月末に開いた研修会では、県世界遺産推進課の職員が製糸の技術革新について説明した。明治初期に日本はフランスの協力で器械製糸の富岡製糸場を造り、第2次大戦後には自動繰糸機を開発して海外に機械を輸出したことを指摘。「長年にわたる農家、製糸の技術者、研究者らが技術革新を続け、国内外に伝えた歴史が貴重」と訴えた。
この価値に基づき、構成資産は富岡製糸場を核に直接製糸場と関連のある伊勢崎市の田島家住宅、藤岡市の高山社跡、下仁田町の荒船風穴に絞り込まれたことも示した。
伝道師協会は各地のイベントや出張講演など、年間170回近く県の資料やパネルを使って同遺産群の広報活動を行っている。近藤会長は「新年度の(世界遺産登録)推薦書提出に向け、正確な情報を県民に伝えなければならない。県と二人三脚で活動していきたい」と気持ちを引き締めている。
同協会のメンバーは11日、上毛新聞社(前橋市古市町)で開かれるシルクカントリー双書発刊記念イベントに参加。新しい資料やパネルで来場者に登録を目指す活動を解説する。
県は、同遺産群のホームページや県庁内に掲示している大型ポスター、パネルを3月までに順次変更していくことにしており、同課は「新しい価値と構成資産を県民に周知し、一丸となって世界遺産登録運動を進めていきたい」と話している。