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《もの語り 絆のかたち(24)》 “命”宿る大切な工具 養蚕の歴史を伝承

大切な工具で繭玉を細工した手芸品を作る沢入さん
大切な工具で繭玉を細工した手芸品を作る沢入さん

繭玉を細工した手芸品を手掛けている「まゆ工芸教室」(藤岡市藤岡)には、干支(えと)の生き物をかたどったかわいらしい繭人形が並び、沢入千賀子さん(68)が愛用の工具を使って手作りした作品の数々が楽しめる。

胴となる繭玉に手や足などのパーツを貼り合わせて制作。工具はパーツを作る際、型をとる金型として使用、部位ごとに使うものを変えるため、約130種類にのぼる。市内で長年にわたって干支の繭人形を作っていた工芸師、山田俊一さん(故人)が使っていたものだ。

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2003年に他界した山田さん。残された家族は工具を使う後継者を探しており、出会ったのが沢入さんだった。その後、繭玉を使った手芸品を制作している沢入さんに「私たちには扱えない。地域に役立つように使ってくれないか」と工具一式を託した。「繭を使って群馬の民芸品を作る」という山田さんの思いとともに。

思いの詰まった工具を任された沢入さん。繭の魅力を伝えるために、自宅で作品制作を続ける傍ら、地元の公民館や学習センターで繭を使った手芸品作りを行うサークルの講師も引き受けた。山田さんの大事な形見を受け継いだことで「地域に根付いた養蚕の歴史を守っていく気持ちもより強くなった」と当時の心境を語る。

沢入さんはこれまでの人生を「繭との縁を感じる」と振り返っている。高崎市で農家の五女として生まれ、幼少から養蚕作業に明け暮れる母の後ろ姿を見て育った。1967年に嫁いでからも養蚕を手伝ったことなどから、繭は身近な存在だった。

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明治から大正期にかけて養蚕の普及に寄与した高山社を顕彰する市民団体「高山社を考える会」にも入会。養蚕がさかんな地域に住む者として伝統産業の歴史を知る必要があると考え、高山社跡や高山長五郎の功績について独自に勉強を重ねている。

使い続ける工具は沢入さんにとってかけがえのないものであり、山田さんの"命"が宿っている。「できる限り工具を活用して創作を続けていきたい」と話す一方で「今後は工具を受け継ぐ人が育ってくれるはず」と次世代の成長に期待を寄せる。

今は亡き山田さんの遺志を引き継ぐとともに、養蚕の歴史を伝えていく―。4月からはサークルで工具を貸し出し、山田さんが主に手掛けていた干支の繭人形作りを始め、会員に作り方を教えていく予定だ。

(藤岡支局 落合慶祐)

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