製糸場の誕生描く 専門学校生が映画製作 世界遺産登録を後押し
- 掲載日
- 2012/02/11
富岡製糸場を撮影するスタッフ
世界遺産登録を目指す旧官営富岡製糸場(富岡市)の建設当時をたどるドキュメンタリー映画の製作が、前橋市の中央工科デザイン専門学校(中島利郎学校長)で進められている。総合プロデューサーに同市出身の映画監督、桜井真樹(まさもと)さんを迎え、生徒たちが役者やスタッフとして奮戦。米国で4月に開かれるヒューストン国際映画祭に出品するほか、広く県民に公開する方針で世界遺産登録運動を後押ししていく。
「はい。本番」。富岡製糸場で工女が学んだ学校を再現した臨江閣(前橋市)の和室。桜井さんの指導を受けながら、工女役の生徒たちが読み書きや裁縫する姿を熱演、その様子をカメラが追う。ほかにも生徒たちが照明や録音、美術、衣装、小道具などの役割をこなしている。
映画の題名は「初めの始まり~ブリクとシマン」。ブリクはれんが、シマンはコンクリートを示すフランス語で、建設を指導したフランス人技師、ポール・ブリュナにちなんで名付けた。国内初の巨大製糸場建設に挑む姿を取り上げる一方で、工女の教育に力を入れた歴史にも触れている。
同校を運営する有坂中央学園の創設70周年記念事業として昨年10月、生徒の有志と職員で製作委員会を発足させて取り組んできた。
桜井さんを囲んだミーティングを週に1回程度開き、脚本や絵コンテなどを生徒が決定。すでに製糸場の外観やれんが作りの再現、工女の教育シーンなど大半の撮影が終了し、3月上旬には完成する予定だ。
演出と脚本を担当した映像クリエイターコースの鈴木淳さん(18)は、「まずスタッフ全員の役割を把握することが大切だと分かった」と語り、同コースで撮影技術担当の木暮優さん(27)は「当時の人たちの苦労は、今とは比較にならないほど大きかっただろう」とれんが職人をしのんだ。 製作統括を務める笠原文男副校長は「裏方担当の生徒も、撮影がうまくいくよう気配りして自発的に行動してくれるようになった。製作を通して、郷土の貴重な文化遺産について理解を深めることができた」と話している。
◎養蚕「記録にとどめる」
総合プロデューサーを務める桜井さんは、2008年に米国・ヒューストン国際映画祭ドラマ部門に出品した「母 外与子(とよこ)―愛は悲しみを超えて」で金賞を獲得。昨年、長編ドキュメンタリー部門に出した「ヒューマニティの伝統―萩原朔太郎と群馬マンドリン楽団」も金賞になり、映画づくりの手腕に定評がある。
富岡製糸場に注目するようになったのは10年ほど前で、前橋市の養蚕農家で蚕を撮影したことがきっかけだという。養蚕農家と生糸の生産量が激減している現状を知り、「なくなってしまう前に記録にとどめなければ」と思い立ったという。
養蚕や富岡製糸場を題材にした作品は今回で3本目。「日増しに生徒が成長していることが大きい。立派な作品に仕上がりそうだ」と期待している。