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《ホット通信》 高山社の歴史脈々 桑摘み取り学校で養蚕 藤岡美九里西小

調べ学習で育てた繭を見つめる4年生
調べ学習で育てた繭を見つめる4年生

藤岡美九里西小(新井和良校長)の4年生は、社会科や総合学習などの時間を利用して「地域の歴史」や「養蚕」についての学習を進めている。昨年度からは地元の農家から蚕を譲り受けて養蚕を実践。校区内にある国指定史跡「高山社跡」の見学や繭玉作りなどの体験学習も行う。旧官営富岡製糸場を核とする絹産業遺産群の世界遺産登録に向けて機運が高まる中、地域の歴史や文化、自然を生かした活動に取り組む児童の姿を追った。

(藤岡支局 落合慶祐)




◎各教科を横断

校舎近くを三名川が流れ、豊かな自然環境に囲まれる同校は、地域への愛着や誇りの育成を教育目標の一端に掲げている。地域に残る文化遺産や偉人の功績を再認識するため、4年生で明治、大正期に全国へ養蚕技術を普及させた「高山社」を柱とした学習を展開する。社会科で取り扱う内容だが、総合学習や国語といった各教科を横断する活動として発展させている。

一昨年9月からは、授業の一環として地元の農家から蚕約200匹を譲り受け、校舎内で養蚕を始めた。児童が毎朝通学路で摘み取ってきた桑の葉を与え、霧吹きをかけて湿度調節したり、動き回る蚕をまぶしに戻すなど悪戦苦闘の日々が続いた。2、3カ月して蚕が繭を作り、カイコガが卵を産む瞬間に立ち会った児童は、数々の思い出を振り返るように見つめていたという。

ふ化から繭へのサイクルを繰り返し、一昨年から数えて4世代目の飼育に至っている。繭の大半は乾燥して保存、6年生が卒業式に着けるコサージュの材料として使用される。担任の伴野悠理教諭は「養蚕の仕組みを学べ、地域交流もでき、とても良い経験になっている」と目を細めた。

養蚕技術を全国に普及させた高山社跡の見学
養蚕技術を全国に普及させた高山社跡の見学

◎校外学習で体感

2009年に国指定史跡となった高山社跡。「富岡製糸場と絹産業遺産群」の構成資産として世界遺産登録へ向けての整備が進められており、穏やかな山間地に世界的な視線が注がれている。

授業では地域への関心を深めるため、高山社跡や富岡製糸場、地元の養蚕農家を見学する校外学習を実施。養蚕技術「清温育」を開発した高山長五郎の母屋や赤れんが造りの倉庫を自身の目で体感したことで、より一層子どもたちの学習意欲は高まった。まとめとして手作り新聞にも取り組み、活動成果を事細かにつづった。

繭玉作りを通して伝統文化を体験
繭玉作りを通して伝統文化を体験

◎郷土愛深める

養蚕に関する伝統文化を体験する取り組みも行われる。1月中旬、県立歴史博物館の学芸員を招いて「繭玉作り教室」が開かれた。児童は養蚕農家の思いを考えながら紅白の繭玉を手作りし、小枝に刺して飾った。翌日には学校南側にある水田に組まれたやぐらでどんど焼きを行い、繭玉を焼いて一年の健康と五穀(ごこく)豊穣(ほうじょう)を願った。

現在は2月下旬に開かれる学習成果発表会に向けて準備をする。「養蚕」、「高山長五郎」、「高山社」、長五郎が生きていた時代の「衣食住」の4テーマについてグループごとに図書館などで調べ学習に奔走中だ。

学習を主管してきた春山秀幸教頭は「児童が『美九里が好きだ』と口にするような学習を目指す」、新井校長は「特色ある取り組みとして継続させ、地元に根付かせたい」と力を込める。児童は美九里地区への愛着を深めるとともに、先人の思いや歴史をその手で紡いでいく。

富岡製糸場(富岡市) 田島弥平旧宅(伊勢崎市) 高山社跡(藤岡市) 荒船風穴(下仁田町)