シルクカントリー双書発刊イベント 多様な絹の魅力紹介 展示や実演でにぎわい
- 掲載日
- 2012/02/18
スライド上映で富岡製糸場への思いを語った吉田さん
◎製糸場の四季スライド上映 吉田さん
第1部では前橋市出身の建築写真家、吉田敬子さんが片倉工業の依頼で手掛けた「写真集 富岡製糸場」のスライド上映を行い、四季折々の製糸場をとらえた写真を紹介するとともに撮影当時を振り返った。
写真集は、かつて製糸場を所有していた片倉工業が制作。吉田さんが1年間通いつめて撮影した写真を「製糸場の四季」「空から見た製糸場」などの項目に分けてまとめた。非売品で、図書館など関係先に寄贈された。
スライド上映では、写真集からえりすぐったカットを紹介。撮影前には必ず建物やサクラの木に声を掛けてその日の具合を見たこと、時には光や風、雲、満月を待って撮影を試みたエピソードを明かした。
吉田さんは「日本の歴史と文化が刻まれ、人の生きざますら見てきたような建物」と明治期の建物群が現存していることの素晴らしさを強調。「当時のまま建物が残っているのは日本の誇り。自分の恋人、親のように思って見守っていきましょう」と呼び掛けた。
上州座繰りを体験する来場者
◎糸の風合い座繰りで体感
会場では「上州座繰り」の実演コーナーが設けられた。富岡製糸場世界遺産伝道師協会の指導を受けながら、来場者が座繰り器を回して繭から糸を引く昔ながらの技術を体験した。 伝道師によると、よい糸に仕上げるこつは「座繰り器のハンドルを回す左手は一定のゆったりしたスピードで、湯をかき回す右手は速く」といった左右の異なる動き。
来場者はアドバイスに従って右手と左手のリズムに気を使いながら、手作業で生み出す糸の風合いを楽しんでいた。
伝道師の解説を聞く来場者たち
◎構成資産をパネルで説明
会場入り口には富岡製糸場と絹産業遺産群の4件の構成資産について紹介したパネルが展示され、伝道師協会の伝道師がそれぞれの価値を丁寧に解説した。 説明に聞き入っていた高崎市の男性(32)は「構成資産に入った4件の関連性を具体的に説明してもらえてよかった」と話していた。
ロビーには、前橋市の刺しゅう講師、伊藤幸さんが手掛けた立体作品「水辺に映る藤」も飾られた。作品は垂れ下がる藤の花を真綿と繭玉、山繭で表現。繭と真綿の美しさを生かした斬新な表現に来場者が足を止めて見入っていた。