「絹遺産」に追加 高崎・旧官営新町屑糸紡績所 県が検討 世界遺産登録も視野
- 掲載日
- 2012/03/02
高崎市新町の旧官営新町屑糸(くずいと)紡績所=豆字典=について、県が「ぐんま絹遺産」の登録に向けて検討していることが1日、分かった。市や所有企業も前向きな姿勢。本県の世界遺産候補「富岡製糸場と絹産業遺産群」の構成資産4件に含まれていないが、県の細野初男企画部長は同日の県議会一般質問で、「新町屑糸紡績所は明治期の官営工場で富岡製糸場に匹敵する施設。地元の意向を踏まえて世界遺産としての価値を研究していきたい」と答弁した。条件が整えば、世界遺産の追加登録の可能性が出てきた。
関根圀男氏(自民)が紡績所の価値や世界遺産の追加登録について質問した。
高崎市教委文化財保護課によると、県から市に紡績所をぐんま絹遺産に登録したいとの要望があり、所有企業側に伝えたという。紡績所は市重要文化財に指定されていないが、同課の担当者は「所有会社の方針が決まれば、市の文化財指定やぐんま絹遺産登録に向けて価値を調査していきたい」と説明した。
紡績所の所有会社を統括するクラシエホールディングス(東京都港区)は「紡績所を何らかの形で活用するのは好ましいと考えており、ぐんま絹遺産ネットワークの参加などについても検討している」とコメントした。 県世界遺産推進課によると、世界遺産登録運動初期の2006年時点で、紡績所は県が世界遺産候補としてリストアップした13件に含まれていた。しかし、市との調整が難航し、翌年、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産暫定リスト入りした「富岡製糸場と絹産業遺産群」には含まれず、昨年10月の国際専門家会議で決まった構成4資産にも入っていない。 同遺産群は新年度にもユネスコへの推薦書提出が見込まれ、14年の世界遺産登録を目指している。世界遺産登録後の構成資産の追加登録は国内ではまだないが、フランスの王立製塩所などの事例があり、紡績所も14年以降の登録が期待される。
- 豆字典
- 旧官営新町屑糸紡績所 1877(明治10)年に開業。製糸の際に発生する屑糸や屑繭を使って絹紡糸を作る国内初の施設で、日本人技術者だけで初めて設計、施工したとされる。87年に三井家へ払い下げられた後、絹糸紡績、鐘渕紡績などを経て、現在はクラシエフーズ(旧カネボウフーズ)が所有。