《シルクカントリーin富岡製糸場》蚕種貯蔵の“冷蔵庫” 荒船風穴(下仁田町南野牧)
- 掲載日
- 2012/03/21
繭の増産に大きく貢献した荒船風穴。建物がなくなった現在も石垣から吹き出す冷気を体感できる
蚕種を貯蔵する"天然の冷蔵庫"だった荒船風穴。岩の隙間から吹き出す冷気を利用して蚕種がふ化する時期を遅らせ、それまで1年に1回しかできなかった養蚕を複数回できるようにした。繭の増産に大きく貢献した施設だ。
荒船風穴は1905~14年にかけて、長野県境の荒船山北麓に3基造られたという。蚕種を付けた「種紙」を合わせて110万枚貯蔵する能力があり、国内最大規模を誇った。取引先は全国38道府県のほか、朝鮮半島にも及んだ。
現在残るのは石垣部分だけだが、当時は土蔵式の建物が石垣を覆うよう造られ、冷気を閉じ込めていた。今でも石垣に近づくとひんやりとする。
25日の世界遺産候補を巡るスタディーバスツアーでは、場所や現地の状況によりコースから除いたが、富岡製糸場で開かれる「富岡製糸場と絹産業遺産群」特別展でパネルなどを展示。荒船風穴が、生糸の大量生産に果たした役割を学ぶことができる。