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「富岡製糸場と絹産業遺産群」Web

《シルクカントリーin富岡製糸場》絹の歴史多くの人に 遺産群に「感動」「納得」 展示やシンポ 4資産の理解深める

本県産の品種「ぐんま黄金」でブローチ作りを楽しむ人たち
本県産の品種「ぐんま黄金」でブローチ作りを楽しむ人たち

「シルクカントリーin富岡製糸場」が開かれた富岡製糸場には24日、県内外から家族連れらが訪れ、世界遺産登録を目指す「富岡製糸場と絹産業遺産群」への関心の高さをうかがわせた。同製糸場、田島弥平旧宅(伊勢崎市)、高山社跡(藤岡市)、荒船風穴(下仁田町)の4資産を紹介する特別展、花まゆづくり、シンポジウムなどが行われ、来場者が遺産群を構成する4件の価値をさまざまな角度から学んだ。

午前9時の開場とともに訪れたのは、東京都町田市の石戸宣彦さん(52)一家の5人。草津温泉への一泊旅行の途中で立ち寄ったという。「世界遺産候補と聞き、何年も前から来たいと思っていた。きょうは勉強していきます」と東繭倉庫内の特別展へ向かった。  東繭倉庫で富岡市が土、日曜に開いている座繰り体験に挑戦した千葉県流山市の千葉裕子さん(59)は「こんなに難しい作業なんですね」と苦笑。夫の常治さん(63)は「建物が素晴らしい。ぜひ、きちんと残してほしい」と貴重な遺産の保存活用を訴えた。

富岡製糸場など4資産を紹介するパネルが並んだ特別展
富岡製糸場など4資産を紹介するパネルが並んだ特別展

■見ると違う

各施設を興味深そうに見学していたのは、前橋市の川島栄美子さん(41)。夫の摂郎さん(46)、長女の澄香さん(8)と初めて来場した。川島さんは「イベントがあることを知り、いい機会と思って来た。世界遺産候補と知ってから関連本を読むなどすごく興味があった。実際に見ると違いますね」

■「明治」に驚き

この日、製糸場内を巡るガイドツアー(富岡市主催)は10回行われ、それぞれ20人ほどが参加。「教科書で写真を見たことはあるけど、こんなにすごい施設だとは知らなかった。来なければ分からないですね」と、さいたま市の板東千尋さん(16)。母の道子さん(49)、姉の沙織さん(20)も「建てられた明治5年のまま残っていることに驚いた。世界遺産候補というのも納得」と口をそろえた。

山梨県上野原市の杉本泰広さん(58)は「建物がすてき。工女さんと言えば暗いイメージだったが、解説を聞いて富岡は違うと知った」と、理解を深めていた。

午後のシンポジウムを聞いた地元富岡市の加藤佳子さん(51)は「市外の人も誇りに思ってくれていることが分かり、うれしかった。市民も製糸場を理解して大切に思い、アピールしてほしいとあらためて感じた」と世界遺産登録に向け、地元の意識の高まりも大切だと強調していた。

展示された高山社の模型に見入る来場者
展示された高山社の模型に見入る来場者

◎きれいに咲いた 親子で花まゆづくり

 繭を使った工芸品「花まゆ」づくりのワークショップは、製糸場の食堂で開かれた。名古屋市東区の花まゆ作家、酒井登巳子さんらを講師に迎え、120人が本県産の黄色い繭「ぐんま黄金」でバラのブローチづくりを体験した。

1個の繭から花びらと花心、葉を切り出したキットを使い、参加者は繭の内側からはぎ取った5枚の花びらを丁寧に重ねた。講師の指導を受けながら、指先で花が開く角度を調整するなど細かい手作業に打ち込んだ。

ピンセットで慎重に花心を据えると、温かみのある繭の質感を生かした1輪が完成。「おばあちゃんに見せよう」と、親子でそれぞれ作品を並べて携帯電話で撮影する参加者もいた。  家族5人で訪れた埼玉県新座市の関根広篤さん(48)は「子どもと一緒に作ることができて良かった。素材の強さに驚いた」。唯真君(6)も「花びらを重ねていくのが楽しかった」と出来栄えに満足していた。

富岡製糸場の東繭倉庫を見学する人たち
富岡製糸場の東繭倉庫を見学する人たち

◎生産支えた密な連携 特別展で4資産紹介

東繭倉庫では、4資産をパネルと模型で紹介する特別展が25日まで開かれている。富岡製糸場世界遺産伝道師協会と下仁田町解説ボランティアの計16人が資産の歴史や特徴、それぞれの結び付きを説明した。

会場に並べられたのは、4資産の外観や内部を写した写真などのパネルと模型約60点。荒船風穴については、石垣の上に土蔵が建てられていた明治末期の写真のほか、内部の構造が分かる模型を使い、自然を利用した蚕種貯蔵の仕組みを紹介した。

解説員は「良い蚕、良い糸を得るには製糸場だけでなく、貯蔵や養蚕技術などの施設が不可欠でした」と、4資産の密接な関連を強調した。

最近、高山社跡を見学したばかりという高崎市本郷町の小林英雄さん(64)は「世界遺産登録に向けた機運が高まり、郷土の歴史が見直されてきている」と話し、「高山社と田島家で行われていた養蚕法の違いがよく分かった」と理解を深めていた。

太田市安養寺町の服部けい子さん(62)は「養蚕農家で育ったので、母が作業する姿や桑園の風景を思い出した。丁寧な解説でとても分かりやすかった」と語った。

富岡製糸場(富岡市) 田島弥平旧宅(伊勢崎市) 高山社跡(藤岡市) 荒船風穴(下仁田町)