7月に推薦決定 富岡製糸場と絹産業遺産群 世界遺産 文化審特別委了承へ
- 掲載日
- 2012/05/31
文化庁は、国連教育科学文化機関(ユネスコ)への世界文化遺産の推薦候補を決める文化審議会世界文化遺産特別委員会を7月12日に開き、本県の「富岡製糸場と絹産業遺産群」の推薦を諮る方針を固めた。国内10候補の中で、同遺産群の推薦準備が最も進んでいると判断した。特別委は推薦を了承する見通しだ。9月までに政府が正式決定し、ユネスコに暫定推薦書を提出。2014年の世界遺産登録を目指す。
世界遺産登録に不可欠な国の文化財指定が済んでいない田島弥平旧宅は伊勢崎市教委から今年1月、国史跡指定の申請書が文化庁へ提出され、6月中に文化審が答申する見込み。県が作成している推薦書案もほぼ完成しており、手続き上のハードルをクリアしている。文化庁もこれまで、「準備が整った候補から順次推薦する」と説明してきた。
ユネスコは14年登録分から、文化遺産候補は各国年1件とすることを決めている。これに合わせて文化庁も本年度の推薦を1件とする方針で、特別委で富岡製糸場を審議することは実質的に推薦候補が絞り込まれたことを意味する。
7月12日の特別委で了承されれば、世界遺産条約関係省庁連絡会議で政府が推薦を正式決定し、9月末までに暫定推薦書、来年1月をめどに正式推薦書をユネスコへ提出。順調にいけば、国際記念物遺跡会議(イコモス)が来年夏ごろに現地審査を行い、14年夏のユネスコ世界遺産委員会で登録の可否が審議される。
「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」(長崎県)なども推薦を目指しており、7月の特別委の前に開かれるワーキンググループの協議しだいでは、他の候補との調整が必要になる可能性もある。
富岡製糸場と絹産業遺産群は、明治政府がフランスから製糸と工場建設の技術を導入して1872(明治5)年に設立した富岡製糸場を中心に、製糸場と連携して繭生産に貢献した田島弥平旧宅(伊勢崎市)、高山社跡(藤岡市)、荒船風穴(下仁田町)の計4資産で構成。養蚕・製糸の技術革新と国際交流により高品質な生糸の大量生産を実現し、絹の大衆化をもたらしたことを世界遺産としての顕著な普遍的価値に掲げる。
同遺産群は2007年、ユネスコの世界遺産暫定リストに記載された。県は専門家による県世界遺産学術委員会を09年に組織し、文化庁や海外の識者の意見も聞いて推薦書の改訂を進めている。特別委の了承後は、文化庁が中心となって推薦書を完成させる。