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「富岡製糸場と絹産業遺産群」Web

天然冷風利用の構造 荒船風穴 謎を解明 世界遺産登録へ説得力 下仁田町教委が調査

国史跡「荒船風穴」
国史跡「荒船風穴」

本県の世界文化遺産候補「富岡製糸場と絹産業遺産群」を構成する4資産の一つで、天然の冷風を利用して蚕種を貯蔵した国史跡「荒船風穴(ふうけつ)」(下仁田町南野牧)=豆字典=について、町教委は今月、風穴の構造解明に向けて有識者による調査整備委員会を設置する。風穴の研究やデータ蓄積は始まったばかりで、冷風が吹き出す要因や範囲など明らかになっていないことも多い。自然の冷風を生かした特殊な構造物のデータを集め、将来的に冷風の発生原理の謎に迫る。

蚕種を貯蔵した風穴は大正期に全国で200カ所以上あったとされるが、現在はこの多くが消滅したり、所在が分からなくなり、国史跡に指定された風穴は荒船風穴と中之条町の東谷(あずまや)風穴のみ。風穴の整備は技術的に確立していないため、通常の史跡で検討される具体的な利活用策の前に、荒船風穴では調査研究を中心にした有識者委員会を設ける。国史跡として整備されるのは初めて。

調査整備委は歴史・埋蔵文化財や石積みの研究者ら10人ほどで構成。町教委が発掘調査や冷風のモニタリング、整備を手掛ける際に専門家の立場から指導、助言する。植生や土木、林業の専門家も助言者として必要に応じて加わる。今月下旬に第1回会議を開き、本年度は全3回を予定している。

町教委の調査は、石垣の積み方や石の加工痕の資料化、年間を通じた冷風の温度測定、詳細な地形の把握、明治と大正期の管理棟跡の試掘などで3年程度かかる見込み。町教委は「世界遺産登録を見据え、さらに説得力あるデータを示すための調査をしっかり行いたい」としている。

今年3月に保存管理計画がまとまり、風穴の保存に向けた指針ができた。本年度は2010年に一部の石積みが崩落した1号風穴の復旧にも着手し、崩落前の図面と写真を参考に冷風構造を損なわないよう石を積み直すことも検討する。

現在の風穴へのアクセス道は幅員が狭くカーブも多く、駐車スペースは限られている。町教委は「下仁田ジオパークや神津牧場など観光資源のネットワーク化も検討するが、立地的に大規模な観光整備は難しい」として、環境保全と見学者の安全対策も踏まえ、歴史や意義など総合的な解説ができるガイダンス施設を別に整備する方針。当分の間は町ふるさとセンターなどで資料展示を充実させる。

豆字典
荒船風穴 天然の冷風を利用して蚕種(蚕の卵)を貯蔵した施設。当時、年1回だった養蚕を複数回行うことを可能にし、蚕糸業の発展に貢献した。1905年から39年まで利用され、国内最大規模の貯蔵能力を誇り、取引先は全国から朝鮮半島にも及んだ。3基の石積みが残り、今も冷風が吹き出している。2009年度に国史跡に指定された。

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