《ぐんま食彩絵巻(12)》まゆこもり 絹の文化語る銘菓 田島屋 富岡市内匠
- 掲載日
- 2012/06/19
繭玉1個が湯のみ茶わん1杯分。くず湯「まゆこもり」(20個入り1050円)
真っ白な繭玉をかたどったくず湯「まゆこもり」。旧官営富岡製糸場のおひざ元で創業した田島屋(富岡市内匠)が26年前に商品化し、上品な見た目と熱湯に溶かすだけの手軽さで評判になった。製糸場の世界遺産登録運動が盛り上がる中、絹の街を象徴する銘菓として浸透している。
以前から富岡の象徴として養蚕や絹のイメージを絡めた商品を提供してきた。江原徹社長(67)は「手土産にできるご当地お菓子で富岡をPRできればと考えた」と開発の経緯を明かす。
くず粉は江戸時代からある珍しい食品だったと言われ、七日市藩から徳川幕府に献上された歴史がある。富岡産くず粉は今は流通していないが、この歴史的経緯を踏まえ商品化を決めた。
従来のくず湯は鍋にかけて煮なければならなかったため、熱湯だけで作れる「インスタントくず湯」を目指した。奈良・吉野産のくず粉を選び、でん粉と砂糖を独自の配合で混ぜ合わせ、さらりと溶けるようにした。完成型の繭玉の大きさは実際の繭とほぼ同じ。素材を型で押し固め、ひび割れないようできるだけ空調を使わず、自然乾燥で仕上げる。
「食べた人は『懐かしい味だ』と喜んでくれる。年配の人にとって、くず湯は母や祖母の思い出が詰まった優しい味なんです」と江原社長。若い世代には「食べるくず湯」として新しいアレンジを提案しており、抹茶やしょうが味、シルクタンパク配合など多彩な風味を展開する。
くず粉とでん粉、砂糖を混ぜて押し固めた「まゆこもり」。繭の形を守るため自然乾燥が原則
昨年6月、本店兼工場を上州富岡駅北側から上信越道富岡インターチェンジ近くに移転し、店名を「まゆ菓優・田島屋」と改めた。工場長を務める長男、正洋さん(32)が新商品を考案し、日仏の技術で建設された製糸場にちなみ富岡産シルクとフランスの砂糖で焼き上げたどら焼き「シルク・ド・らやき」などを生み出している。
座繰り製糸は湯の中の繭から糸を引くもの。繭玉を湯に溶く「まゆこもり」はそれを象徴する菓子になった。江原社長は「富岡や養蚕の文化を菓子で伝えられるのも面白い」と地元の魅力を詰め込んだ菓子づくりを続けていく。
昨年6月に移転オープンした新店舗のイメージは「和モダン」
◎食べてみました
優しい甘さと独特のとろみ、一口だけで気分もほっこりしてくる。「まゆこもり」の魅力は多彩なアレンジレシピにある。黒蜜・きな粉を混ぜるとくずもち風、コーヒー用ミルクを加えると生クリームのような柔らかな甘さに。暑い季節には「冷やしくず湯」。くず湯を冷蔵庫で冷やしてレモン汁を数滴加える。するとレモンゼリーのように爽やかな味わいになる。飽きずに何杯でもいけそうだ。