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「富岡製糸場と絹産業遺産群」Web

輝き増す4資産 絹産業遺産群世界遺産へ推薦

創業時の姿残す富岡製糸場(富岡市富岡)
創業時の姿残す富岡製糸場(富岡市富岡)

文化審議会の世界文化遺産特別委員会で「富岡製糸場と絹産業遺産群」を国連教育科学文化機関(ユネスコ)に推薦することが12日了承された。「富岡製糸場と絹産業遺産群」を構成するのは富岡製糸場(富岡市)、田島弥平旧宅(伊勢崎市)、高山社跡(藤岡市)、荒船風穴(下仁田町)。いずれも繭や生糸の増産に多大な功績をもたらし、日本の近代化を支えた。

「世界遺産」登録に大きく前進したことで、今後さらに注目されそうだ。

◎創業時の姿残す富岡製糸場(富岡市富岡)

明治政府が殖産興業を掲げてフランスから器械製糸や工場建築の技術を導入、1872(明治5)年に開設した。全国から工女が集まり、製糸技術を学び、地方に伝える模範工場となった。

民間払い下げ後の明治後期から大正期にかけ、養蚕教育機関の高山社、蚕種(蚕の卵)生産の田島家、蚕種を冷蔵した荒船風穴と協定を結び、生糸の大量生産システムを確立。この生産体系が全国に広まり、生糸生産は1930年代に世界市場の80%を占めた。世界各地にも広がり、絹の大衆化に貢献した。

  • ▽見学 休場日12月29~31日
  • ▽料金 大人500円、高校大学生250円、小中学生150円
  • ▽問い合わせ 富岡市富岡製糸場課電話0274・64・0005

養蚕農家の原型 田島弥平旧宅(伊勢崎市境島村)
養蚕農家の原型 田島弥平旧宅(伊勢崎市境島村)

◎養蚕農家の原型 田島弥平旧宅(伊勢崎市境島村)

換気を重視した養蚕技術「清涼育」を唱えた田島弥平(1822~98年)がその実践に、63(文久3)年に建てた大型養蚕家屋。瓦ぶき総2階建てで、屋根に換気用の櫓(やぐら)を載せ、四方の壁に窓を設けて通風を良くした。

この構造は、弥平の著す「養蚕新論」によって全国に普及、近代養蚕農家建築のモデルとなった。現在、旧宅には弥平の子孫、「ぐんま島村蚕種の会」会長の田島健一さんが居住している。

  • ▽見学 個人宅のため非公開(外観のみ見学可)
  • ▽問い合わせ 伊勢崎市教委文化財保護課電話0270・63・3636
天然の冷風利用 荒船風穴(下仁田町南野牧)
天然の冷風利用 荒船風穴(下仁田町南野牧)

◎全国に養蚕技術高山社跡(藤岡市高山)

養蚕指導家、高山長五郎(1830~86年)が明治初期に設立した養蚕教育機関「高山社」の発祥地。

長五郎は83(明治16)年、通風と温度管理を調和させた飼育法「清温育」を確立。蚕の病気を防ぐ方法として近代日本の標準的な養蚕法となった。多くの実習生が養蚕技術を学び、全国、海外に広めた。

長五郎は亡くなるまでここで居住しながら清温育の開発、指導教育を行った。事務所と伝習所が藤岡市中心部に移転した後は、分教場として利用された。

  • ▽見学 平日のみ。休日は事前に問い合わせが必要、外観は見学可
  • ▽問い合わせ 藤岡市教委文化財保護課電話0274・23・5997
全国に養蚕技術 高山社跡(藤岡市高山)
全国に養蚕技術 高山社跡(藤岡市高山)

◎天然の冷風利用 荒船風穴(下仁田町南野牧)

蚕種を貯蔵する"天然の冷蔵庫"。岩の隙間から吹き出す冷気を利用、蚕種がふ化する時期を遅らせることで、1年に1回しかできなかった養蚕を複数回できるようにした。

1905~14年にかけて、長野県境の荒船山北麓に3基造られた。蚕種を付けた「種紙」を計110万枚貯蔵する能力は国内最大規模で、取引先は全国38道府県のほか、朝鮮半島にも及んだ。現在石垣部分だけが残るが、当時は土蔵式の建物が石垣を覆うよう造られ、冷気を閉じ込めていた。

  • ▽見学 冬期は見学に制限あり。風穴内部は立ち入り禁止
  • ▽問い合わせ 下仁田町ふるさとセンター電話0274・82・5345
ちょうちん行列 富岡製糸場の西繭倉庫前で、世界遺産登録の暫定リスト入りを喜ぶ富岡市民=2007年1月
ちょうちん行列 富岡製糸場の西繭倉庫前で、世界遺産登録の暫定リスト入りを喜ぶ富岡市民=2007年1月

◎世界遺産登録運動の歩み

世界遺産登録運動は2003年9月、県が研究プロジェクトを設置、スタートした。

05年には、有識者らによるフィールドミュージアム「21世紀のシルクカントリー群馬」推進委員会が発足。県や上毛新聞社などと富岡製糸場をはじめ、絹遺産のある市町村でキャンペーンを展開。この年、製糸場を所有する片倉工業が建物群を富岡市に寄付。休日も公開されるようになり、見学者が多数訪れるようになった。

県と市町村、県民が運動を盛り上げ、07年1月には10資産で構成していた「富岡製糸場と絹産業遺産群」が世界遺産国内暫定リスト入り。その後、県は国際専門家会議などを経て構成資産を4件に絞り込み、本登録に向けた整備を進めている。

両陛下が視察 富岡製糸場を視察され、市民の歓迎に応えられる天皇、皇后両陛下=2011年8月
両陛下が視察 富岡製糸場を視察され、市民の歓迎に応えられる天皇、皇后両陛下=2011年8月
住民が案内 「シルクカントリーin下仁田」のイベントで荒船風穴を見学する県民=2010年9月
住民が案内 「シルクカントリーin下仁田」のイベントで荒船風穴を見学する県民=2010年9月
魅力再発見 「シルクカントリーin伊勢崎」では伊勢崎銘仙の魅力を紹介するファッションショーが開かれた=2010年3月
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富岡製糸場(富岡市) 田島弥平旧宅(伊勢崎市) 高山社跡(藤岡市) 荒船風穴(下仁田町)