「新発想世界に提供」 特別委 本登録向け自信 絹遺産群を推薦
- 掲載日
- 2012/07/13
文化審議会の世界文化遺産特別委員会が12日開かれ、2014年の世界文化遺産登録を目指して、本県の「富岡製糸場と絹産業遺産群」を国連教育科学文化機関(ユネスコ)に推薦することを了承した。政府は近く関係省庁連絡会議を開いて正式に決定。9月末までにユネスコに暫定推薦書を、来年1月をめどに正式推薦書を提出する。近代の産業遺産を中心とする候補が推薦されるのは国内初。03年から始まった登録運動は大きな節目を迎えた。(関連記事 7、26、27面)
順調にいけば、ユネスコ諮問機関の国際記念物遺跡会議(イコモス)が来年夏ごろに構成4資産の保存状況などについて現地調査し、14年夏のユネスコ世界遺産委員会で登録の可否が審議される。
4資産は、明治政府が1872(明治5)年にフランスから製糸技術を導入して設立した富岡製糸場のほか、製糸場と連携して繭生産に貢献した田島弥平旧宅(伊勢崎市)、高山社跡(藤岡市)、荒船風穴(下仁田町)。
非公開の特別委では、4資産の保存管理計画や文化財指定がほぼ済んでおり、世界遺産としての価値をユネスコにアピールできると判断された。高品質な生糸の大量生産を実現し、絹の大衆化をもたらした近代の養蚕、製糸分野での技術革新と国際交流に普遍的価値があるとした。
本県の絹産業遺産群の世界遺産登録運動は、03年に県が富岡製糸場の登録推進を表明して始まった。07年に10資産の遺産群として世界遺産暫定リスト入り。その後、県世界遺産学術委員会や海外専門家の意見を踏まえ、世界遺産としての顕著で普遍的な価値や構成資産について検討を重ねてきた。
また、同日の特別委では、世界遺産に昨年登録された「平泉」(岩手県)の周辺の遺跡を暫定リストに加えることも認めた。新たに暫定リストに記載されるのは、世界遺産登録の際に除外された柳之御所遺跡など5カ所で、地元自治体が追加登録を求めていた。
◎世界の絹文化に影響
記者会見した西村幸夫委員長(東大副学長)によると、委員から「絹産業の全国的な広がりも示すべきだ」「生糸生産における世界の中の日本の役割と、日本での富岡製糸の位置付けに少しずれがある」などの指摘があった。しかし、富岡製糸場が絹産業の進歩に圧倒的に重要な役割を果たし、残っている製糸場が建築的、規模的に素晴らしく、国内全体の絹産業遺産群の代表として推薦することに異論はなかったという。
西村委員長は「大半の近代産業遺産は欧州で造られ、非欧州圏に広がったが、富岡製糸場はそうではない。日本で開発した技術が世界の絹文化に影響を及ぼしたことは新しい発想として世界遺産委員会で受け入れられる」と期待を込めた。
特別委では、「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」(長崎県、熊本県)も審議されたが、構成する文化財が多く、「全体として作業が遅れている」(西村委員長)として、今回の推薦は見送られた。
◎世界文化遺産登録への想定スケジュール
- 2012年9月末まで
- 政府が推薦を決定し、ユネスコへ暫定推薦書を提出
- 13年2月1日まで
-
ユネスコへ正式な推薦書を提出
夏ごろ イコモス現地調査
- 2012年9月末まで
- 政府が推薦を決定し、ユネスコへ暫定推薦書を提出
- 14年夏
- ユネスコ世界遺産委員会。認められれば、登録決定