《世界遺産 本登録への課題(1)》 受け入れ態勢強化 日本の宝伝えて ガイド育成や説明板設置
- 掲載日
- 2012/07/14
前橋市中心商店街で啓発活動をする伝道師協会の会員=7月3日
2014年の世界文化遺産登録を目指す本県の「富岡製糸場と絹産業遺産群」が本年度、国連教育科学文化機関(ユネスコ)に推薦されることが了承された。県内外からの注目度が増す中、本登録に向けての課題を探った。
「鉄骨造りの赤れんが倉庫ならまだしも、木骨れんが造りの建物がこれほど完全に残っているなんてすごい」。13日に初めて富岡製糸場を訪れた横浜市の女性(75)は感嘆の声を上げた。前日の推薦了承の報道に接し、1人で新幹線で駆け付けた。「日本が誇れる宝。ぜひ世界遺産に登録されてほしい」と期待を込めた。
◎"大入り"を予想
この日の来場者数は411人。普段の平日とそれほど変わらないが、個人客が目立った。「新聞を見て来たという人や、街中で号外を見て、欲しいと訪れた人もいた。この3連休は、県内外から多くの人が来てくれるだろう」。富岡市の担当者は"大入り"を予想する。
県世界遺産推進課にも13日午前、「富岡製糸場について知りたい」と、岡山県の女性(84)から電話があった。父親がかつて前橋市内の繊維会社に勤めていたという女性は、世界文化遺産に推薦されることをテレビのニュースで知った。担当した職員は早速、資料を送った。
◎国の代表
「今までは県民の遺産にとどまっていたが、今後は国の代表として、全国の人に応援してもらえるようにしていくことが大切」。松浦利隆課長は受け入れ態勢の強化を課題に挙げる。絹産業遺産群の見学者に魅力が伝わるように、4資産をガイドする人材育成、説明板の設置などを県としてこれまで以上に支援していく方針だ。
県外向けにも、東京・銀座のアンテナショップ「ぐんまちゃん家(ち)」を活用した情報発信、「ぐんま絹遺産」のホームページ、バスツアーなどをさらに充実させる。
絹産業遺産群について学ぶ県の講座の修了生を中心に組織する富岡製糸場世界遺産伝道師協会(近藤功会長)は、8年前から世界遺産登録を推進する啓発活動を県内各地で展開。
設立当初は、世界遺産について話しても理解してもらえなかったが、約250人の会員が年間200日近く、各地で地道に活動した結果、県民の意識も徐々に高まってきたという。
「産業遺産は説明しないと魅力が伝わりにくいため、伝道師の果たす役割は大きい。自分たちの遺産として紹介できるように県民にも理解が深まるように働き掛けたい」。松浦課長はさらなる機運の盛り上がりに期待を寄せる。
(次回から社会面に掲載)
- 自分たちの父母や祖父母が関わってきた遺産が、世界遺産にまた一歩近づいた。4資産全てについて説明できるのが伝道師協会。今後は、群馬の生糸を輸出した横浜など県外活動にも力を入れたい。
【頑張ります】
富岡製糸場世界遺産伝道師協会会長 近藤功さん