《世界遺産 本登録への課題(3)》「清温育」開発の高山社 整備活用へ本腰
- 掲載日
- 2012/07/16
高山社跡の取り組みについて、市民から厳しい意見が寄せられた地区別座談会
「富岡市には製糸場専門の担当課がある。藤岡市は文化財保護課の何人かの職員が兼務で対応しているだけ。もっと総合的な取り組みをしてほしい」
11日夜、藤岡市内の公民館。絹産業遺産群の一つ「高山社跡」(同市高山)のある美九里地区で開かれた地区別座談会(市主催)で、地元住民から市幹部に厳しい意見がぶつけられた。
◎社員4万人
明治期の全国標準となった養蚕法「清温育」を開発した高山社。最盛期には全国に約4万人の社員、800人近い巡回指導者を抱えたとされる教育機関であり、その発祥の地が高山社跡だ。
市は2010年度に約5200万円の予算を組み、個人所有だった土地・建物を購入。施設公開への道を開いた。その後、設置管理条例を制定したほか、解説員養成講座の開催、有識者らの委員会による保存管理計画と整備活用基本計画づくりに取り組んでいる。
ただ、庁内で活用方法を総合的に検討する組織が発足したのはことし6月。5年前の07年1月、高山社跡を含む本県の絹産業遺産群が世界遺産暫定リスト入りしたことを考慮すれば、取り組みの遅れは否めない。
高山社跡は清温育を発案した高山長五郎の生家であり、蚕室のある母屋などが現存している。しかし、中心市街地に移転した本社施設は残っていない。それだけに「存在意義を知ってもらうには、見学者に高山社が果たした役割や精神といったソフト面を丁寧に説明しなければならない」(市教委文化財保護課)。
◎見学を拡大
昨年の見学者数は約1800人。今後、急増することも予想される。市はこれまで平日に限っていた見学を14日から当分の間、休日にも拡大することにした。県のサポート職員2人が中心となって対応しているが、解説員も増やしていく必要がある。
市は地元の意見を踏まえながら本年度中に整備活用基本計画をまとめる方針で、建築当初の状態に戻すため、母屋の壁に張ってある金属板を除去し、しっくいに改修することも検討している。
世界遺産の本登録まで順調にいけば2年。地元の地区別座談会で市教委幹部は「市でできることは早急に対応していきたい」としたものの、ハード面の整備だけをみても、駐車場の確保、トイレの整備、敷地内の桑園の復元など問題は山積している。
高山社を考える会会長 小坂裕一郎さん
【頑張ります】
高山社を考える会会長 小坂裕一郎さん
高山社の「みんなで豊かになろう」という信条を、今こそ伝えていかなければならない。それには解説ボランティアの増員が不可欠。考える会にいる28人の解説員を本年度中に100人台にしたい。