30年かけ製糸場改修 富岡市の整備活用計画案 敷地全体見学対象に 西繭倉庫/繰糸装置/トイレ増設
- 掲載日
- 2012/07/24
2014年の世界文化遺産登録を目指す旧官営富岡製糸場について、富岡市は23日、製糸場の将来像を示す整備活用計画の素案を公表した。できるかぎり施設を公開する方針で、来年度からの30年計画で場内全体を整備。現在非公開の西繭倉庫に耐震補強などの修理と展示機能を整え、5年後をめどに公開する。中期的には、繰糸装置を修復して製糸も再現する計画だ。本年度の世界遺産推薦が内定し来場者の増加が予想されるため、計画は製糸場の価値を分かりやすく伝えることに重点を置いた。
富岡製糸場整備活用委員会(委員長・斎藤英俊京都女子大教授)がまとめた。パブリックコメントを踏まえ、11月にも正式な計画をつくる。岡野光利市長は23日の会見で「文化財としての保存を最優先に整備を進めたい」と述べた。
製糸場の建物は現在、耐震化や改修がされていないため、公開範囲は一部にとどまる。整備計画は建物の特徴に応じて情報発信、研究、体験など場内を6つのゾーンに分け、将来的に敷地全体を見学対象とする。
主要な建物が完成した1943~45年ごろの姿の再現を目指し、施設の整備に短期(おおむね5年後)、中期(5~15年後)、長期(15~30年後)の目安を設けて取り組む。
2014年の世界遺産登録を念頭に、13年度からの短期計画では見学者の安全性や利便性の向上、製糸場の理解促進につながる整備に重点を置く。西繭倉庫で初の本格的な保存修理に取り組むほか、ブリュナ館南側エリアや旧蚕種製造所跡の公開を目指し、場内のトイレを増設する。
各施設の活用については、建物や機械の保存にとどまらず、近代産業の礎である製糸場の「ものづくり」の精神を継承する活用を原則とする考えだ。
中長期としては、現在非公開の副蚕倉庫・副蚕場に残る繰糸装置を再生し、実際に製糸を行えるようにする。社宅エリアは養蚕や織物、染色などの学習・体験活動の場や、製糸場での暮らしを感じることができる整備を目指す。
市は今秋、有識者でつくる文化財保存修理委員会を設置し、整備を完了した施設については、同委員会や文化庁との協議を踏まえて公開を検討する。
8月1日から31日まで、この素案に対する市民の意見を募集。素案は市ホームページや各公民館、製糸場などで公開する。
整備活用計画は、委員会の検討段階で製糸場内にカフェや宿泊施設を開設する意見も出たが、素案には盛り込まれなかった。
【主な施設の整備活用計画】
- ◎短期(5年後まで)
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・西繭倉庫…東繭倉庫内の収蔵品を移設して展示
・鉄水槽…ガイド付きで公開
・トイレ…繰糸場南側に設置
- ◎中期(5~10年後)
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・東繭倉庫…2階の一部を休憩所として整備
・繰糸場…製糸工程の流れが分かる形で公開
・副蚕倉庫・副蚕場…繰糸装置一式を修復し製糸を行う
- ◎長期(15~30年後)
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・ブリュナ館南側…屋外イベント広場として活用
・寄宿舎南側…遊歩道を設置
・社宅エリア…一部を休憩所として整備