創建時の技術に挑戦 製糸場の蒸気機関レプリカ製作 富岡の企業結集
- 掲載日
- 2012/08/19
博物館明治村でブリュナエンジンを視察する富岡市と商工会議所の関係者=2月
1872年の旧官営富岡製糸場の創建時に動力として使われた蒸気機関「ブリュナエンジン」を復元しようと、富岡市と富岡商工会議所が、市内企業にレプリカ製作への協力を呼び掛けている。製糸場の心臓部ともいえる重要な機械だが、現物は博物館明治村(愛知県犬山市)で展示され、里帰りは難しい状況。正確な設計図がないなどハードルは高いものの、地元企業の技術力を結集して近代産業のシンボルを復活させ、"工業都市・富岡"をアピールしたい考えだ。
ブリュナエンジンは蒸気の圧力を機械エネルギーに変換させる装置で、製糸場建設を進めたフランスからのお雇い外国人、ポール・ブリュナが同国から輸入したことからこの名で呼ばれる。発生した動力を繰糸場内の繰糸機に伝達したとみられ、製糸場が電化した大正時代まで使われた。
片倉工業が1968年、明治村に寄贈して以来、エンジンは歴史遺産として管理されている。世界遺産登録に向けて富岡市が製糸場への里帰りを打診したものの、色よい返事は得られなかった。
市の意向を受け、商議所が「各企業の技術をPRする絶好のチャンス」とレプリカ製作に手を挙げた。昨年12月に岡野光利市長が明治村に出向き交渉した際、協力を得られたことから、市は本年度予算に設計委託料500万円を計上した。
7月に発足した製作委員会の幹事にはIHIエアロスペース、OKI(沖電気工業)、ヨコオなど市内の大企業も顔をそろえた。今後は市内から協力企業を募って来年3月までに設計図を仕上げ、来年度以降、部品づくりを始める計画。
ただ、外観の復元だけでなく稼働している状態の展示が目的のため、課題は山積み。蒸気機関製造のノウハウがある企業がない上、パーツ構成も分からないため設計も手探りだ。無事に完成したとしても、レプリカを製糸場内に設置するには文化庁などとの調整も必要で、展示場所探しも難航しそうという。
商議所は「難しいことは承知。まずは部品ひとつでもいいから、多くの企業に参加してもらいたい」と意義を強調している。